内容説明
恋情に苦しむ、波乱の生涯を吉川英治の名文が描く。
著者等紹介
吉川英治[ヨシカワエイジ]
明治25年(1892)~昭和37年(1962)。神奈川県生まれ。本名、英次。家運の傾きにより、11歳で小学校を中退。さまざまな職を転々とし、社会の辛酸を舐める。18歳、苦学を覚悟して上京。29歳、東京毎夕新聞社に入社。翌年、初の新聞小説『親鸞記』の連載を開始。31歳、関東大震災に遭遇したことをきっかけに、作家活動に専念。『剣難女難』『鳴門秘帖』などで、たちまち人気作家へ。43歳、朝日新聞に『宮本武蔵』の連載を開始。爆発的な人気を得て、国民文学作家の地位を不動にする。70歳で、この世を去る(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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たつや
42
お坊さんが恋をしてはならなかったんですね。親鸞を応援してしまう。2016/11/24
OCEAN8380
6
範宴29歳まで話。恋情に苦しみ修行に打ち込む範宴、そして法然の弟子入りを決意する。三巻が楽しみだ。弟の恋人梢が盗賊に連れて行かれた時はどうなったかはらはら読んでいたが、新しい旦那と子に恵まれ幸せに暮らしていた時はホッとした。2016/04/30
ken
5
親鸞に対する印象として「妻帯をした僧侶」というのが一般的だろうが、そこに至るまでの彼の血の滲む努力とその苦悩は案外知られていない。自身の信念を曲げたのでも、ましてや愛欲に溺れたのでもない。誰よりも自己欺瞞を排して、自己矛盾や人間の不可解さを直視し続けて選んだ道なのだ。また翻って西洋の思想史を見ると、人間の精神や主体に対する親鸞の疑いがいかに早く鋭かったかが分かる。ハイデガーにその晩年「もしもっと早く歎異抄に出会っていればギリシア語など学ばずに日本語を学んでいた」と言わせたのは親鸞のこの先見の明だったか。2016/10/24
デントシロー
3
恋に落ちる親鸞。仏陀の教えを厳しい修行や難解な教典を理解する事に専念していても人間の生理、感情を押さえる事はできない。悟りを得る事とは何か?永遠のテーマがある事は理解出来る。生きていれば苦楽は当然ありどんな宗教でも人間として生きて行く中で多くの出来事を真摯に向き合っていく事である。人としての道を外して生きる物をどのように考えるか親鸞は突き止めようとする。吉川英治も極悪人を登場させる事で善人にも悪人にも人は平等に救われるという事を表現したいのであろう。実際の人の生活は自力本願であり信仰は他力本願である。2016/09/11
kaede0914
2
いつの時代も、常識、習慣や慣例が正しいとして、思考停止してしまう人がいる。奥義に触れ考えることで、本当の教えの意味を理解し、実践することはやはり常人には真似できないし、理解も難しいと思う。それゆえ、綽空の行動は約1000年後の世界でも、人々の心を惹きつけるのだろう。2021/04/22