出版社内容情報
《内容》 本書は,神経運動学と発達心理学との融合から生まれた斬新な治療技法の提言であり,現在,認知運動療法として知られているリハビリテーション治療の小児領域への応用を具体的に示したものでもある.本書では,環境と心との相互作用としての「知的発達」と,環境と身体との相互作用としての「運動発達」とが「学習理論」をベースとして融合しており,その理論構築は,リハビリテーションの臨床における従来までの幼児の発達観に対して修正を迫り,さらなる知見を加えるものである.本書では,リハビリテーションが幼児に対する一方的な施療ではなく,彼らの注意や興味,そして動機をとらえ,その潜在能力のコントロールに対する高い意識レベルを育て,共に効果を生みだしていくという対話形式,その相互作用においてはじめて成立する技法であることが強調されている.教師としての治療者の役割を,理論と実際の両面から具体的に示した画期的な書である. 《目次》 第1章 発達期における行為としての運動 「限定的な」視点 「プラグマティックな」視点 神経生理学的モデル:機能系の概念 異なるコンポーネントの複合の原則 器官の細分化の原則 コンポーネント強化の原則 最低限度保証の原則第2章 行動評価と運動療法 数量的評価 質的評価 行動評価 行動評価のためのプロトコール 聴覚刺激に対する頭部の動き 目の探索行動 目の運動と頭部の運動の協調 「自由な」手の活動 身体の他の部分に対する手の活動 対象物に対する手の活動 物体の把握と手の動作 目と手の協調と体幹の制御 下肢の活動,目と下肢の協調第3章 視覚探索 神経運動学的方略による頭部の制御 視覚系における頭部の制御 視覚機能系の発達 目と頭部の協調:神経生理学的および神経心理学的考察 リハビリテーションとしての考察 認知運動療法 病的な行動 認知運動療法の諸段階第4章 手の操作 対象物への接近,把握,操作 目と手の協調 手と対象物との相互関係 把握と操作の発達 リーチング軌道の発達 対象物への接近の発達 認知運動療法 訓練の諸段階 異常反応の制御のための訓練 受容表面の細分化のための訓練第5章 歩行 目と足の協調と歩行のための前提条件 歩行の発達における機能的な数値 歩行発達の運動学的分析 足と地面の相互作用:その概要と発達 両脚支持期 片脚支持期 遊脚期 認知運動療法 訓練の諸段階 異常な伸張反応の制御と目と足の協調を制御するための訓練 受容表面の細分化のための訓練 体重移動を制御するための訓練第6章 空間と両手の協調:システムモデルと相互作用モデル 幼児の運動発達に関するシステムモデルと相互作用モデル 両手の協調と空間の組織化 上肢長より遠いところへ置いた物体へのリーチング スカーフで隠した物体へのリーチング 蓋がしてある箱のなかに置いた物体へのリーチング 考察 両手協調の第1段階 両手協調の第2段階 両手協調の第3段階 両手協調の第4段階 認知運動療法 第1段階の訓練 第2段階の訓練 第3段階の訓練用語解説心のなかの身体を育てる