内容説明
2013年、シリア内戦のさなか、「国なき民」クルド人たちはシリア北部に「ロジャヴァ」と呼ばれる自治区を確立した。そこでは男女平等、エコロジーを掲げる憲法のもと、民主的連邦制が敷かれたが、ISが侵攻し住民が大量虐殺される。2015年、世界中からロジャヴァのコバニに集まった志願兵の手で都市は防衛され、ISにとって最初の敗北となったが…。混迷が続く中東の地で、イタリア人漫画家が目にしたものとは?
著者等紹介
ゼロカルカーレ[ゼロカルカーレ] [Zerocalcare]
漫画家。1983年、イタリアのアレッツォに生まれる。幼少期の数年をフランスで過ごしたのち、ローマ北東の街区レビッビアに移住。以後、現在まで同地で暮らす。2011年、『アルマジロの予言』を発表し、商業漫画家としてデビュー。2014年、5冊目の単行本となる『わたしの名前は忘れて』を発表し、イタリアでもっとも影響力のある文学賞「ストレーガ賞」のセミファイナリストにノミネートされる
栗原俊秀[クリハラトシヒデ]
翻訳家。1983年生まれ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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こうすけ
16
素晴らしかった!!大傑作!!!ISの襲撃やトルコの圧政と闘うクルド人の自治区ロジャヴァを取材したイタリア人漫画家のルポルタージュコミック。しかし作者の"意識低い系"の語り口が冴え渡り、めちゃくちゃ笑える(訪ねた地名を忘れたりしてる)。こんな重たいテーマで、不謹慎じゃない笑いを生み出せるのは凄い。少年漫画のようなタッチで見やすく1ページずつ笑って読めるのに、泣ける漫画。そして作者の批判は一貫して西洋諸国に向けられている。この語り口にたどり着くまでにどれだけ悩み、考え、勉強したのだろうと想像すると尊敬する。2020/09/12
Yuho Tanuma
3
作者がシリアやトルコのクルド人自治区を取材したルポ漫画。 映画「マイスモールランド」を観てからクルド人に関心を持ち、ジズレでの虐殺を取材した「その虐殺は皆で見なかったことにした」も読んで解像度が上がった状態で本書を読んだ。 日本のアニメに親しんだ作者がギャグを盛り込み、苦境の中逞しく生きるクルドの人々を描いている。 同じムスリムなのにトルコからもISからも攻撃され、独裁政権のシリア政府の支援を受けていること、ムスリムの中でも女性の地位が高く、民主的な思想というのも知らなかった。 翻訳してくれてありがとう。2023/06/23
tekka
1
「いまのコバニは、人間の恥辱の野外展覧会だ。ここに来れば、傍観者が招いた現実を直視できる すべてを元どおりにする気はない。世界に、なにもなかったような振りをされては困るから」2023/09/05
ろばみみ
1
シリア・トルコ・イラクにまたがるクルド人の戦いをイタリア人の漫画家が描いたレポ・ドキュメンタリー。バンド・デシネを読み慣れていないせいか、枠外の雑談が多いなあ、読みにくいな、と思いながらも一気読みした。それだけの力がある。 先日「シリアで猫を救う」を読んだばかりだったが、シリア住民に伝わっていないクルド人の動きの理由がこのコミックで理解が進んだ。2021/02/07
massda
1
ドラゴンボールで学んだ、コロコロコミックにあっても違和感のない絵柄で描かれるクルディスタンルポ。イタリアとトルコやシリアは近いんだなあと思いました。イタリアにも多分、批判ばかりで行動はしないネトウヨみたいのはたくさんいるんだと思うけど、そういうのの批判を恐れずにストレートにクルド人を擁護している姿勢が大変真面目。ただ旅の途中、クルドの都会で「背伸びしてる田舎の若者ような都市」と言う感想を抱くところがあるのですが、著者ローマの人なので「そりゃあんたとこに比べればねえ」って感想しか浮かばないのであった。2020/10/12