内容説明
高学歴ワーキングプアまっしぐら!?な文系院生が送る、笑って泣ける院生の日常を描いたバンド・デシネ。フランスでベストセラー!英米、ドイツ、イタリア、スペイン、アラビア語圏、中国など各国で翻訳出版された話題図書!
著者等紹介
リヴィエール,ティファンヌ[リヴィエール,ティファンヌ] [Rivi`ere,Tiphaine]
博士課程にてアルバート・コーエンの『選ばれた女』における「愚かさ」の表象について研究。その間、パリ・ソルボンヌの大学で事務員として働く。のちにブログ「ソルボンヌ事務所14」を開設。バンド・デシネ作家としての活動を始め、博士課程は中退している。2015年に自身の博士課程における経験を元にした、自伝ともいえる『CARNETS DE TH`ESE』を出版
中條千晴[チュウジョウチハル]
1985年生まれ、フランス・リヨン在住。博士号。ポピュラー音楽・ジェンダー研究。翻訳家でもある。日本の漫画の仏訳多数。2018年小西財団日本漫画翻訳賞ノミネート(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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mukimi
112
働きながら博士論文を仕上げるため奮闘するフランス人女性の自伝的漫画。仏国でベストセラーとなり世界中で翻訳された訳だから世界で本当に沢山の研究者達が奮闘しているのだな…。ここではないどこかへ、知の冒険へ、大きな希望を胸に踏み出しても、恋人に「永遠に試験前の学生みたいな生活してる」と振られる挫折と疲弊の日々。ぼろぼろになっても夢を追う姿は悲劇のようでいて憧れてしまう私は偉人の伝記読みすぎか平和ボケか。自分を貫くには強いだけじゃダメなんだ、悲しいことに。それでも自分が選んだ道を肯定するために、前に進むしかない。2023/05/20
ころこ
48
マンガとしての技術は無いので、相当読み辛いであろうページをどんどんめくらせるのは、博士論文を書くことの「無意味」さが万国共通だということへの共感です。最初はカフカ研究への情熱は揺るぎないものにみえる。ところが、他分野の研究者、院生の仲間、親戚、子供と他者を鏡として相対化された研究対象はだんだんとちっぽけなものにみえてくる。極めつけは、専門家の洗礼を受けるはずであった研究発表会における質問一切なしの無関心は一層彼女を見失わせます。そして、自意識過剰な程、実は他人は自分に関心を持っていないというどこにでも起こ2020/09/02
まこみや
31
カフカの博論を書こうとするジャンヌは、まさにカフカ的不条理の世界に陥ってゆく。「書くってほんと暴力だわ…カフカも恐ろしい活動だって、決して抑圧できない真っ暗なトンネルだって言ってた。」なまじ才能があって研究者を目指すことは、ほとんど人生を棒に振ってもよいくらいの覚悟がなければできることではない。それは、周囲から理解されず、生活苦に満ちた、入り口も出口もない不条理で真っ暗なトンネルなのだ。むしろ才能がなくてあっさり社会人になる方がよほどマシかもしれない。まったくロクでもない世の中になったものだよ。 2020/08/07
くさてる
26
博士論文に取り組むフランスの大学院生の日常を描いたバンドデシネ。よりにもよって専攻がカフカ!なので、その文学世界と主人公の日常の融解具合などが面白かった。文化や社会の違いはあれど、大学院生の懊悩や不安はどこも同じなのだろうな……。院生の生活の厳しさや実情についても解説で説明があって理解が助けられました。2020/09/05
buuupuuu
22
人文系大学院生活の悲喜劇。一見乱暴な絵に見えるけど、絶妙な表現で思わず笑っちゃいます。主人公のジャンヌは、周囲からの理解も得られないし、学内でも碌な支援を受けられず、孤独に奮闘して追い込まれていってしまいます。ここら辺が本当にリアル。自分も人文系の院生だったときには、自然科学系の場合と違って、なんでそんなことをやってるのか説明しなくてはならないかのような圧力を感じることがありました。おそらくそれは人文系学問が社会的に意義を認められていないが故なのかなと思います。その辺りはこの漫画でもよく描かれていました。2021/12/31