内容説明
“崇高”“自然美”“神学・形而上学”“倫理・感性学”“表現と構成”“モンタージュ”“ソーシャリー・エンゲイジド・アート”“不定形音楽”“トータル・セリエリズム以降の音楽”没後50年、多角的な読解を通して析出するアドルノ美学の全体像。
目次
第1部 総論―美学、倫理学、形而上学(アドルノにおける¨Asthetik/Ethik;“我ガ望ミ空シカラマジ”―アドルノの美学における消失点としての形而上学)
第2部 モデルネ以降の音楽(表現から構成への移行―一九五八/五九年「美学講義」に見るモデルネ芸術のアポリア;自由のイメージとしての不定形音楽;アドルノの音楽的経験と前衛音楽の音楽思考について―「部分全体」概念を手がかりに)
第3部 境界の解れと絡み合い(“モンタージュ”論から見るアドルノ美学―モデルネ芸術と死の原理;アドルノの美学とソーシャリー・エンゲイジド・アート(SEA)の接続可能性)
第4部 風景と崇高(二重化する「風景」とその行方―ヨアヒム・リッターとの比較を通じて;アドルノと崇高―カントと対照しつつ)
著者等紹介
西村誠[ニシムラマコト]
元長野県短期大学准教授。哲学・倫理学。1949年京都市生まれ。1983年京都大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得満期退学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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しゅん
6
ナチスに直撃した世代の現代文明批判者であり、芸術、とりわけ音楽へのこだわりを持ち続けたアドルノにおける「美」の概念の諸相。9の論文は、音楽の「部分・全体」問題、モンタージュへの両義的な評価、ソーシャルエンゲージドアートとのつながりなど、題名だけでも面白そうだし、実際面白い。表現主義というのは内面の自然主義なわけであり、その挫折から構成主義が出てくる、あたりの美術史の歴史観が私の中ではぼんやりしてたな。「風景」が近代の発明であり、そこに含まれる自然美にも人為的な作用がある、という話はまるで柄谷行人みたい。2021/03/03