内容説明
20世紀の詩人、劇作家でブレヒトほど音楽と強いかかわりを持った人はいないだろう。音楽、とくにソングのある劇、メロディのついた詩をブレヒトは何よりも望み、作曲の作業にも強く介入し、自分のテクストに応える音楽を生み出してきた。だが従来、ブレヒトと音楽の関係はまったくといっていいほど研究されてこなかった。本書では、こうした亀裂を埋め、ブレヒトと音楽のつながりの全容を提示したうえで、彼が20世紀の音楽・演劇文化に与えた影響を検証したい。
目次
シンガーソングライター、ブレヒト―若き詩人とサブカルチャー
2 シンポジウム「抒情詩への回帰―歌としてのブレヒトの詩」(「人前でキターを弾くこともあるからさ」―音楽重視のブレヒト研究への提言;失われた記憶―勘違いされたマリー.Aへの愛の歌;『あとから生まれてくるものたちへ』―ブレヒトとハンス・アイスラー;ブレヒトと日本の作曲家たち―林光と萩京子のブレヒト・ソング)
アイスラーの晩年の創作活動にみるブレヒトの影響―『クーヤン・ブラクのじゅうたん職工たち』の分析を通して
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ばん
5
ブレヒトの演劇、特に「男は男だ!」以降、叙事詩的戯曲への志をして、歌える詩を、いや歌うための詩を書き続けたブレヒト。歌の中ではモノローグ的要素や、ストーリーテリング的要素があり、彼は明確に、正確に、有用に演劇を作成していった。それはいわば観客と作者の支配―被支配関係であり、彼の説教臭くない(なぜなら教えはしないで、気付き学ばせる)教育思想に触れられる。劇団という事で、音楽的なサポートを与えてくれた人びととのエピソードや、ギターのゲリラ的性質などに触れ、劇中歌に留まらないブレヒトの詩の魅力に迫っていた。2013/01/23