感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
がんちゃん
2
老いらくの恋と蔑むのは簡単だけど、それが人間・斎藤茂吉だったんですね。東北の寒村から医者になる前提で東京に養子に出された自分を「少年の流され人」と詠んた彼。医者となり、意気揚々と欧州留学が帰ってみたら、婿に入った医院が全焼して茫然自失となる彼。なんとか医院を復興させたと思ったら、今度は妻の不倫騒ぎ。そんな彼の前に美貌の人が現れた。恋に狂って何が悪い。いや、恋に狂うざるをえなかった。彼の人生を思うと、なぜか救われた気さえします。「世の常の迷路」と彼は詠んだけれど、だからこその人間、斎藤茂吉だったんですよね。2022/09/15