内容説明
肢体不自由児ゆえに『心魂自由児』である“少年世一”。彼ほどの存在感をもってこの世に君臨した生き物はほかになく、その軌跡を忠実に辿ることによって、干からびていた命がたちまちにして瑞々しさを取り戻す。
著者等紹介
丸山健二[マルヤマケンジ]
1943年、長野県飯山市に生れる。国立仙台電波高等学校卒業後、東京の商社に勤務。66年、『夏の流れ』で文學界新人賞を受賞。同年、芥川賞を受賞し作家活動に入る。68年に郷里の長野県に移住後、文壇とは一線を画した独自の創作活動を続ける(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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アナクマ
22
リゾート開発に揺れる町。1000日間の出来事を1000ページ、1000の主語/視点で描くアイデアと執念の創作。「私は知恵の輪だ」「私は廃屋だ」没頭だ…浮世だ…よもやま話だ…羨望だ…氷柱だ…。わずかずつ進展するイベント、それぞれにうごめく町びとたちを、著者のフィルターを通して眺めるステンドグラスな構図。◉小説の作りに驚き興味ひかれ語彙の豊かさも味わえますが、肝心の〈著者フィルター〉はどうか。ときに生命の真実を抉ぐるようであり、ときに中二的な皮相も感じられ。結局、主語は千あるのか、ひとつなのか。92年刊。→2024/02/29
ハチコ
0
※以下感想は究極版ではありません 「私は××だ」という名乗りから始まる1ページを1000種類の語り部で1000ページ連ねた作品。 ××には風や鳥やら感情やらの実態をもつもたない問わず、その町にあるものたちがその町のことを1ページずつ多角的に語る。 初見時、構成の設定にただただ衝撃を受けました。語り部達は少年と鳥を見守るようでいて、あくまでさらりとした客観的視点。1000の日記を読むうちにゆっくりとストーリーが進む面白さがありました。2024/08/06