内容説明
青の、橙の、色彩の風景は、東山魁夷の感覚的な世界。白の風景は、東山魁夷の精神的な世界。人間の心を救う風景が、三部作の最後を飾る。
目次
私の窓
霧
清晨
白い壁
雪庭
たにま
瀧
月明
早春譜
暮潮〔ほか〕
著者等紹介
東山魁夷[ヒガシヤマカイイ]
1908年7月8日、横浜に生まれる。本名、東山新吉。1926年東京美術学校(現・東京藝術大学)日本画科に入学。1929年最初の展覧会出品作『山国の秋』が第十回帝展に入選。1947年第三回日展出品作『残照』が特選を受賞。1956年前年の第十一回日展出品作『光昏』により日本芸術院賞を受賞。1965年日本芸術院会員に任命される。1969年文化勲章を受章し、あわせて文化功労者に選ばれる。1974年日展理事長に就任(~1975年)。1999年5月6日死去。享年九十。従三位、勲一等瑞宝章を贈られる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Hideto-S@仮想書店 月舟書房
72
「風景は個々の目を通して心に感知するもので、誰にでも同じ風景は存在しない。ただ、人間同士の心は互いに通じ合えるものであり、私の風景は私達の風景になり得る。風景は心の鏡である」。昭和を代表する日本画家・東山魁夷画伯は、名文家でもありました。〈色の風景三部作〉の最終章。〈青〉〈橙〉が画伯にとって感覚的な世界だったのに対し、〈白〉は精神的な風景。白い珊瑚礁のような樹木、水辺の情趣、墨絵のような中国の山々、幽玄な霧の景色など白を基調とした50点の作品について、詩のような言葉で画伯自らが解説しています。静謐な世界。2015/01/03
アキ
65
文喫3冊目。東山魁夷の白の世界。改めて山、しかも冬山の風景を多く描いていたんだなと思う。晩年になると自身の冬の時代と結びつける言葉が多くなる。「風景は心の鏡である。その国の風景はその国民の心を象徴するといえよう。」しんしんと降る雪のつもる静かなる冬山を故郷を懐かしく思い出しながら読んだ。自分のなかでの子供の頃の白い景色はなぜだか無音になる。2019/11/16
野のこ
30
「風景は心の鏡」のまえがきの文章から引きこまれた。山国の厳しい自然とそこに暮らす人びとの生活に強く心うたれた気持ちが私の心にも深く伝わってくる。「私の風景は私たちの風景となりえる。」にグッときました。絵と添えられた文章が一体となった感動。その瑞々しい風景に東山魁夷の息づかいを感じた。すごい。東山魁夷の白は温かい、なぜならば彼の心が宿っているからかな。引き続き青の風景へ。 2017/12/23
れみ
27
東山魁夷さんの色の風景三部作の最後は、白。白が印象的な風景、白い景色のなかで印象的な色彩がとても美しくて素敵。このなかでは表紙になっている「静唱」それから「霧氷の譜」や「年暮る」「聖夜」「冬の旅」が好き。作品も素敵だけど、最初の「風景は心の鏡」という文章がとても心に響く。同じ風景を見ても人それぞれ感じ方は違うものだけど、魁夷さんの作品を見て心を動かされるということは、その瞬間になにかが通じ合っているということなのかな。だとしたらとても嬉しい。2014/03/31
3月うさぎᕱ⑅ᕱ゛
26
景色は人間の心の祈り。「雪降る」-絶え間なく降る雪。内に閉ざされた静寂の世界。しかし、その中にはほの温かいものがある。ここにあるのは死の世界ではなく、静かに響き合う生の鼓動である。「白い朝」のきじばとのうしろ姿、装画にもなっている「静唱」、「月光」が好き。雪景色とそれぞれに東山さんの言葉があり、とても素敵な本でした。2016/02/02