内容説明
感情を、売り買いする時代。乗客に微笑むスチュワーデス。債務者の恐怖を煽る集金人。彼らは肉体労働者や頭脳労働者であるまえに感情労働者である。丹念なインタビューをもとに、商品化される「心」を探究する。
目次
第1部 私的生活(管理される心の探究;手がかりとしての感情;感情を管理する ほか)
第2部 公的生活(感情管理―私的な利用から商業的利用へ;両極の間で―職業と感情労働;ジェンダー、地位、感情 ほか)
付録(感情モデル―ダーウィンからゴフマンまで;感情の命名法;仕事と感情労働 ほか)
著者等紹介
室伏亜希[ムロフシアキ]
1972年愛知県生まれ。静岡県立大学大学院国際関係学研究科国際関係学専攻修士課程修了。現在、財団法人静岡県国際交流協会職員
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
タツヤ
18
ちょっと難しすぎて飛ばし読み。2022/07/19
白義
18
この本は感情論の金字塔、意外と原著は古いがあまりに今日的なテーマを扱った基本文献だ。いや、勤労への肯定意識が強い日本の方が成り立つかもしれない。社会に適応するために人間はいかに自他の働きかけにより感情を管理し、道具化しているか、それがいかに商品として企業に搾取されるか、そしてそれがいかに人間の自省、自己自身の心を奪い取っているかを、現場の実例も豊かに交えながら具体的に描いている。企業や社会がいかに感情規則を構成し管理するかだけではなく、現場の感情労働者によるリアクションも活写されている2012/10/04
ととろ
16
新社会人になり、営業職の感情労働と自分個人の感情とが同化してしまうことを危惧していたところ、知人が本書を紹介してくれた。本書で取り上げられる客室乗務員は、感情が商品であると明確に認識した上で感情労働に従事している。感情労働においては、労働の一部として客への感情表現が含まれていて、それは当人の個人的な感情とは切り離して行われる。同化を怖れるあまり感情労働を拒絶したり、表層と深層が不一致であることに罪悪感を抱いたりするだけでなく、感情労働と割り切って業務に従事するスタンスも選択肢のひとつとして考慮できた。2011/07/10
きいち
15
ホックシールドが見出し課題として設定した状況は、今や広く世の中の仕事の多くを覆っている。まさに先駆けの本。◇先駆者ならではと感じたのは、仕事の場での自己コントロールに限らず、プライベートでの感情管理についても深く考えられていること。客室乗務員が研修で参照せよと指示される家庭のリビング自体が機内のような感情管理の場となっている・・なんて、初手からなんて鋭いんだ。◇実際自分も、自分が働きやすいようにすのも仕事の一部、と考えるようになってる。子育てでも同様。そのこと自体を客観視させてくれる、示唆に富む本だった。2013/04/30
富士さん
8
ホックシールドさんは感情労働というのが通説だと思うのですが、本書を読むと感情労働への着想自体はミルズやゴフマンのものでこの人のものであるとは言えず、また感情労働自体も最近に生まれたものではないことがわかります。この本が重要なのは、感情労働を精密に分析し、そこに注目して調査することによって、人格の変化をも要請するような感情労働が制度的に行われていることを明るみに出し、そのような労働がジェンダーなどの区分に沿って配分されていることを示した点にあると思います。本書はむしろジェンダー論の本なのではないでしょうか。2021/02/06