出版社内容情報
グローバル資本主義の首都NYに、
Z世代が熱烈に支持する社会主義市長、誕生。
家賃の凍結、公共バスや子供保育の無償化、
市所有スーパーマーケットの展開、富裕層・大企業増税……
トランプ政権とも全面対決。
ニューヨーク市(NYC)の新しい市長に、若き民主社会主義者、ゾーラン・マムダニ氏が就任した。当初は無名候補ながら、民主党予備選では前州知事として圧倒的な知名度・資金力を持つA・クオモ氏を打ち破り、党の公認候補に。本選でも激戦の末に当選を果たした。生活に苦しむZ世代・ミレニアル世代の支持を主な基盤に、バーニー・サンダース上院議員らの全面支援も受け、共和党・トランプ陣営とも対決の構えを見せている。
若い世代を中心に支持を集める理由は、家賃の凍結(据え置き)や公共バスや子供保育の無料化、市所有スーパーマーケットの展開、富裕層・大企業増税など、行き過ぎた資本主義・新自由主義への矛盾を感じる層に刺さる政策だ。一方、ウォール街や不動産業界は氏の政策に危機感を募らせ、トランプ政権とは全面対立の可能性がある。
グローバル資本主義の首都であるNYCで、社会主義を掲げる市長が誕生するのは、史上初の政治的事件である。本書ではこの背景と、イスラム教徒の移民の子という米国社会のマイノリティからNYC市長になり得た氏の人物像、リベラルでポピュリズム色の濃い政策の具体的な内容、想定されるエスタブリッシュメント(既得権益層)との対決の図式、そして米国内の過去の社会主義都市の歴史などに触れながら、現代都市における社会主義的政策の実現可能性を展望する。
【目次】
序章 なぜ今、社会主義市長がニューヨークに?
●社会主義者、イスラム教徒、若者――異例づくしのNY市長
●既得権益に抗う生粋のヒューマニスト
●ニューヨークをアフォーダブルに――労働者・若者の心を掴んだ公約
●“マムダニ現象”が予感させる進歩主義の到来
●5万人の若者ボランティアと戦い抜いた選挙戦
●「何かを起こすこと」に参加したい新世代たち
1章 社会主義への土壌――過剰な「場所の商品化」に苦しむ労働者と若者
●「スーパー」の域に達したジェントリフィケーション
●喧伝された“街区の格上げ”と闘争の始まり
・「ディストピアのニューヨーク」と〈I ? NY !〉運動
・市政と不動産業者の結託
・激変したブルックリン
・ビッグテックの台頭で決定的に追い込まれた労働者家庭
●整った舞台で飛躍するアメリカ民主社会主義者(DSA)
・マムダニブームが起きる確かな前兆
・「ジェントリフィケーションへの闘志」を自認するDSAの州議会議員たち
・パワーエリートによる「クールな消費文化」の裏側で
・象徴的な事件となったAmazon撃退運動
・「場所の商品化」を急かすジェントリフィケーションの本性
・官製ジェントリフィケーションと「大きな政府」
・大きな政府?小さな政府?大きな政府
・暮らしの現場に「関与」するマムダニの姿勢
●半世紀に6代の市長が残した「遺産」と「宿題」
・ディビッド・ディンキンズ――扱い損ねた騒動が現在の「政治資産」に
・エドワード・コッチ――民間依存の都市再生への傾倒
・ルドルフ・ジュリアーニ――警察力による「安全になったニューヨーク」の演出
・マイケル・ブルームバーグ――規制緩和と大規模都市開発で目指した「贅沢都市」
・ビル・デブラシオ――リベラル派の期待を背負いつつも苦戦
・エリック・アダムス――醜態続きの反面教師
●そして〈聞く耳〉を持つ人としてのマムダニへ
2章 なぜ社会主義者になったのか?――ヒューマニズムの洗礼を受けたエリートセレブ
●エリート社会主義者を育てた家庭環境
・「ウルトラセレブ」でヒューマニストの両親
・母は著名な映像作家
・父はコロンビア大学教授――植民地主義批判で名声
・崖の上に暮らし、崖の下との格差を知った少年時代
・「特権階級に属している」という皮膚感覚
・アフリカからマンハッタンへ――政治に目覚めた高校・大学生活
・今に至る「宿題」を得た住宅コンサルタント時代
・ラップダンサーとしての顔
●アメリカ人になる――社会主義政治家への道
・市民権を取得しアメリカ民主社会主義者(DSA)に参加
・ニューヨーク州議会下院議員選への立候補
・衣装から読み解く政治スタイル
・妻は売れっ子のアニメ作家――パレスチナ



