内容説明
ファシズムの色濃い日本から、新天地を夢見てソ連に亡命した演出家杉本良吉と女優岡田嘉子―だが、入ソ後の杉本の足取りはいまだにわかっていない。厳寒のシベリアに消えた杉本の「その後」を描く渾身の著。第１０回織田作之助賞受賞作。
感想・レビュー
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bibi
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理想を求めて亡命した結果の過酷さ。しかも不倫だ。囚人移送の地獄のような記述に胸が詰まる。表題作のほかに、ソ連で骨を埋めた日本人捕虜の話と、引き揚げ船での事件をもとにした短編の計3作。これは小説だが実際にこういった現実があったはずなのに、今は誰もが忘れているのではないかと危惧する。戦争はいつでも起こりうるし、甚大な被害を被るのは市井の人々。戦争で大した被害も受けなかった一部の者たちやその子孫らが、戦争への道を躊躇なく進もうとするのではないか。2023/10/14
