内容説明
この本の優れた特徴は、第1に著者の幼児期の心的外傷の体験を基に、アダルトチルドレンがアルコール依存症家族のみならず、他の強迫的嗜癖家族からも出現するメカニズムを、臨床上の治療体験として明らかにしている点である。第2にその克服と回復過程をシステム論と家族療法の原理から、繰り返し具体的に説明し、理解させてくれる点にある。さらに異なる宗教間では、相互に異なる神を容認する寛容の必要性を強調している点も、大部分の日本人が抱いている宗教観と矛盾しない。加えて、著者のいう西欧の伝統的な君主制的家父長制と日本の伝統的な儒教的家父長制とは、父権が神や天の道を背景にして家族の最高権威とされてきた共通性を持っている点等も、最近の日本の子育て、家族問題、教育問題などの解決に有力な手がかりを与えてくれる。
目次
第1章 概観:危機について
第2章 規則に縛られた社会システムとしての家族
第3章 機能的家族システムの特徴
第4章 慢性的に機能不全な家族システムの概観
第5章 強迫的家族:嗜癖的家族で自尊心がどのように損傷したかの検査表
第6章 虐待された人びと:性的または肉体的に虐待する家族の中で自尊心がいかに損傷したかについての検査表
第7章 「悪い」子ども:情動的に虐待する家族の中で自尊心が損傷される仕方についての検査表
第8章 もっとも一般的な家族の慢性的機能不全の影響:すなわち共依存
第9章 能力のない意志を再生させる道程図:第一行程―養子縁組という新たな家族の発見
第10章 失われた自己を明らかにする道程図:第二行程―原家族の呪詛を破壊する
第11章 真実の自己を明らかにする道程図:第三行程―精神的な自覚と思いやりのある社会行動
終章 伝統的価値観の改正
著者等紹介
米岡清四郎[ヨネオカセイシロウ]
1934年新潟県生まれ。1961年法政大学文学部哲学科卒業。1984年州立オハイオ大学大学院修士課程卒業(カウンセリング専攻)国立長岡工業高等専門学校教授を経て、現在、教育環境支援NPO法人「21世紀の寺小屋」理事、心理相談室「米岡の家」所長、家族相談士
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