内容説明
従来、闘病体験や悲嘆過程は家族にとってネガティブな体験で、「立ち直る」あるいは「元の状態に戻る」プロセスが研究の対象とされることが多かった。しかし、子どもを小児がんで亡くした母親たちへの聞き取り調査を続ける中で、著者はネガティブな側面だけに注目するのでは母親たちの経験全体を描き出したことにはならないのではないかと考えるようになった。本書では、母親たちが闘病体験や悲嘆過程の中で起こってくる困難な状況に対処するありさまを一つひとつ丹念に取り上げ、母親の内面で何が起こっているのか、それがどのように変化して状況が変わってくるのかが検討されている。また、著者がこの研究の結果をもとにして、1996年から行なっている短期集中型サポートグループの方法が具体的に紹介されている。
目次
第1章 研究について
第2章 がんと闘う
第3章 看病に専念できる環境をつくる
第4章 医療者との関係づくり
第5章 ターミナル期の母親たち
第6章 わが子の喪失への適応
第7章 子どもをどう位置づけるか
第8章 母親たちの変化と成長
第9章 家族関係の変化
第10章 母親を支える試み