内容説明
世にも精緻な文の祝祭―華麗なる“短文”アンソロジー。
目次
コンサートホール(小山田浩子)
僕の人生の物語(木下古栗)
ドルトンの印象法則(円城塔)
編んでる線(斎藤真理子)
ペリカン(蜂本みさ)
セントラルパークの思い出(藤野可織)
たうぼ(松永美穂)
白いくつ(日和聡子)
旅行(以前)記(青木淳悟)
誤解の祝祭(早助よう子)
親を掘る(大木芙沙子)
病院島の黒犬。その後(西崎憲)
メロンパン(岸本佐知子)
高なんとか君(柿村将彦)
エディット・ピアフに会った日(斎藤真理子)
薄荷(滝口悠生)
悲愁(飛浩隆)
夕の光(皆川博子)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アキ
87
kaze no tanbun 表紙の草の模様と、執筆者の名前に引き寄せられて手に取る。円城塔・斎藤真理子・小山田浩子・岸本佐知子・藤野可織・滝口悠生など18人の作家、翻訳家、ものかき、物語り紡ぎ。小品の間に所々にふっと折り込まれる一文が心憎い。「編み上げたものも、端っこを引っ張れば一本の線になる。」「こんなことになるんだったらあの時殺しておくんだった。」印象に残る短文も多い中、ラストの皆川博子「月の光」に風格を感じました。2021/07/18
藤月はな(灯れ松明の火)
58
小山田浩子さんの「コンサートホール」は懐かしい気持ちになる作品。幼い頃、コンサートホールで迷った時に「関係者以外、立入禁止」の札が掛かった扉の奥には何があるのだろうと夢想していた時、そこから家に帰宅する時の不安を思い出しました。勿論、小山田さんの描く世界は忘れがたく、あり得なさそうであり得そうな光景が広がっていましたよ。七色の野糞の物語で脳内から忘れない存在になった木下古栗氏も強烈!サバンナで現実を思い知らされて当たり前の人生へのカムバックするも些細な事へサバンナへ。諸行無常はジャック・ロンドン作品並みだ2021/09/05
よこたん
49
“夕暮れ時には、けっしてここにきてはいけないと、言われています。だから、わたしは、いまもひとりで、ここで草の冠を、編んでいます。(白いくつ)” きっとさみしくはないのだね、と貴方を想う。何かが、どこかが、ずれているままのような違和感が、不思議ながらも嫌いではない、というよりかなり好き。18人の《短文》アンソロジーは、長さもまちまちで、誰におもねるでもなく、自由気ままに踊るが如く、ただそこにある。懐かしい匂いのもの、SFっぽい趣のもの、少しぞわりのもの、そして、私にはわけがわからない(ごめんなさい)もの。2021/07/22
konoha
48
とても贅沢な〈短文〉アンソロジー。装丁、タイトル、企画が素敵。よくわからない作品の方が多いくらいだけど、面白かった。テキストの一部が、所々に挿入されるのがおしゃれ。好きなのは、木下古栗「僕の人生の物語」、藤野可織「セントラルパークの思い出」、松永美穂「たうぽ」。たうぽが、1番良かった。ユーモアとシュールさ、今時のハッピーエンドが楽しい。木下さんは予想外の展開、固有名詞が絶妙。藤野さんはこなれててレベルが高い。このアンソロジーが、長編を読むきっかけになれば。気になる作家がいる方におすすめ。2021/07/13
ロア
21
エッセイのアンソロジーだと思ってのんびり読み始めたので「コンサートホール」の唐突な時空の歪み感に真っ青になりました。ホラーやファンタジーぽい仄暗いお話が多めの短編アンソロジーでしたよ。こういうの好き!風の短文と題にあるようにどれも数ページの短いお話しばかりですが、それぞれの物語の中身の濃さはある種のリアルさを感じさせ、やっぱりこれはエッセイなのか?とまんまと思わせられてしまったり(*´ω`*)2021/10/25