- ホーム
- > 和書
- > 教養
- > ノンフィクション
- > ノンフィクションその他
内容説明
十九世紀、英国の書店主が出会ったのは、スペインの宮廷画家ベラスケスによる幻の一枚の絵だった。たった数ポンドのキャンバスが、男の人生を、くるわせてゆく―ロンドン、エディンバラ、ニューヨーク。絵とともに流浪した、ひとりの男の物語。
目次
ある発見
ある消像画
画家ベラスケス
ミンスター・ストリート
黒衣の男
ロンドンでの評判
等身大の姿
攻撃
人生の舞台
押収された盗品
裁判
宮廷からの脱出
ブロードウェイのベラスケス
消える画家
消失
魔法の絵筆
幻の絵
無数のチャールズ
失われた絵、発見された絵
救出
著者等紹介
カミング,ローラ[カミング,ローラ] [Cumming,Laura]
1961年生まれ。英国BBCワールドサービスの美術プロデューサー、「ニュー・ステイツマン」誌の美術担当などを経て、1999年から「オブザーバー」紙の美術批評を担当。父親は画家のジェイムズ・カミング。『消えたベラスケス』でジェイムズ・テイト・ブラック賞(伝記部門)を受賞した
五十嵐加奈子[イガラシカナコ]
翻訳家。東京外国語大学卒業(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 2件/全2件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
けろりん
62
ベラスケスの作品とされる絵画を巡る一人の男の数奇な生涯と、稀代の画家の画業とその時代背景を描く、重厚なドキュメンタリーであり、アートミステリである。著者ローラ・カミングは、画家であった父を亡くし、空虚な心を抱えて旅立ったマドリードで《ラス・メニーナス》と出会い、その感動から、本来の生活を取り戻した。美と謎と衝撃を含有する作品と対峙した時の心の動きの鮮烈な描写。膨大な資料を丹念に検証し、スネアという、19世紀に生きた地方の町の書店主の人生を、当に、ベラスケスの絵画的手法で浮かび上がらせる巧みさに圧倒された。2021/10/11
星落秋風五丈原
49
有名画家ベラスケスも、かつて全く関心を持たれない時代があった。①ベラスケスに興味を持つ著者 21世紀 という現在パートに②ベラスケスの絵画を入手したジョン・スネア9世紀③画家ベラスケスの生涯17世紀 という過去パート2つが挟まれた構成になっている。章毎にパートが変わるのでわかりやすい。文中に参照された絵のいくつかは冒頭でカラー表示され、そうでないものも極力頁の中にモノクロで掲載されている。名や評判にとらわれず、人間が絵画の本質を見極められるようになった時、幻の名画は我々の前に姿を現すのかもしれない。2018/02/20
kaoru
18
ベラスケス作と思しきチャールズ1世の肖像画を手に入れたことで人生を狂わせるイギリス人ジョン・スネアの生涯と並行して宮廷画家としてのベラスケスの生涯が語られる。フィリップ4世に信頼されたベラスケスは弱者に優しく、宮廷の道化をモデルに絵を描き、有色人種を助手に雇う。いくつかの名画が掲載されているが、なかでも『教皇インノケンティウス10世』は教皇自身が「真を穿ちすぎている」と評したほど迫力がある。スネアの人生はある意味悲しいのだが、ベラスケスが当時から人びとを魅了する類まれな画家だったことは充分腑に落ちた。2018/03/12
アキ
18
ベラスケスのチャールズ皇太子の肖像画を偶然手に入れて人生を狂わされる実在のイギリスのジョン・スネアの人生を追いかけつつ、彼の作品と人生に焦点を当てた秀作。宮廷画家なるゆえに、1819年にプラド美術館で公開されるまで一般に見られなかった時代に、だれも知らないベラスケスの作品に魅せられて、妻子も捨て、極貧のなか最後まで絵を手放さなかったスネアの人生は幸福だったのか?「この肖像画は本物に見える」と当時から絶賛された、どんな地位の人でもその人の本質を見極めて描くベラスケスの技術と姿勢は感動する程尊敬に値する。2018/03/11
ソングライン
14
プラド美術館で出会ったベラスケスの代表作「ラス・メニーナス」に慰められた作者は、ベラスケスが描いた肖像画を手に入れた男ジョン・スネアの手記を偶然にも目にします。その肖像画の来歴を追うスネア、そのスネアの次第に転落していく人生を追う作者、さらにベラスケスの生涯を重ね合わせ、ミステリアスに物語は展開していきます。描かれた人物の本質を描くことのできたベラスケスの絵は、美術館で多くの人々に感動を与えると同時に、一人の男の人生を狂わせてしまう力を持っています。素晴らしいノンフィクション、おすすめです。2018/07/07