内容説明
人々から恐れられ、蔑まれていた、16世紀死刑執行人。人体を知りつくしていたがゆえの、医療家としての顔。本人の告白から浮かびあがる、処刑人の真の姿を描く。
目次
第1章 徒弟時代
第2章 キャリアの始まり―遍歴修業時代
第3章 親方として
第4章 賢人として
第5章 治療師として
著者等紹介
ハリントン,ジョエル・F.[ハリントン,ジョエルF.] [Harrington,Joel F.]
ヴァンダービルト大学教授。専攻はヨーロッパ史、とくに宗教改革と近世ドイツ。主な著作に、2010年度ローランド・H・ベイントン賞を受賞した『The Unwanted Child:The Fate of Foundlings,Orphans,and Juvenile Criminals in Early Modern Germany』などがある。現在テネシー州・ナッシュビル在住
日暮雅通[ヒグラシマサミチ]
1954年生まれ。青山学院大学卒、英米文芸・ノンフィクション翻訳家。日本推理作家協会会員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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たまきら
25
ドイツ・ニュルンベルクの死刑執行人の日記をもとに、彼の生涯だけでなく当時の大都市と犯罪、差別、病気の蔓延、あやしい医療や魔術といった内容が紹介されています。時代は違えどもサンソン一族のものと状況自体は酷似していますが、物事のとらえ方は非常に冷静で、学術的。こういうところ、やっぱりお国が出るんでしょうか。面白いなあ。2019/05/25
壱萬弐仟縁
24
むごたらしい処刑の口絵多数。冒頭にニュルンベルクなどの43枚の絵。おぞましい。死刑への賛否はなおもある。死刑があるのでその程度でおさまっているとみるか。矯正できるか否か。16Cは手動で処刑している親方と徒弟で執行の仕組みがあったようだ。自動化、テクノロジーのない時代の痛ましい処刑手法。人権感覚、意識がない時代だから成り立っていたのだろうと 思われる。車裂きの刑より軽いとはいえ、絞首刑は恥辱と悲惨な刑と見なされていた(112頁)。死刑執行人は技、腕であろうか?ヒューマニズムなど介入する余地はないのか? 2014/11/09
権現
8
16世紀のニュルンベルクにおいて終生を死刑執行人として送ったフランツ・シュミットの日記を通じて、当時の社会的な罪と罰に対する通念、処刑人という職業に対する蔑視、そしてその中で名誉回復に人生を費やしたフランツ親方の生き様を描いた一冊。ほんの数百年前まで当たり前のように行われていたフランツ親方の残忍な仕事は、実のところあらゆるコミュニティにおいて状況次第でいつでも生まれ得るものであり、また現代社会が当時の市井からそこまで飛躍的な進歩を遂げているわけではないということがよく理解できた。2016/08/15
zoros
7
村上春樹の「村上さんのところ」でのおすすめ本だそう。 おススメじゃなきゃ出会えてない本です。 フランツ親方の生き方に勇気づけられた。 人道的な進歩は遅いのだと思いました。2019/03/02
モルツー
7
当時の犯罪者の様子がリアルに感じられた。16世紀ドイツの様子を知りたい人には最適な本ではないだろうか。犯罪者について、死刑執行人であるシュミット親方が克明に記述してくれているのでとても興味深い。しかし決してキワモノではない。シュミット親方は自分の仕事に真摯に向き合っていて、「人々の代表として刑を執行しているだけ」というスタンスにブレがない。民衆にとっての「法」について、考えるきっかけを与えられた。2014/11/30