内容説明
長い間失われていた写本。千年の時を経た十五世紀、再びその姿をあらわした書物は、世界の針路を変えてゆく…。今から二千年前、真実はすでに記されていた。ルネサンスの引き金となった書物とひとりの男との、奇跡の出会いの物語。全米図書賞、ピュリッツァー賞受賞。
目次
第1章 ブックハンター
第2章 発見の瞬間
第3章 ルクレティウスを探して
第4章 時の試練
第5章 誕生と復活
第6章 嘘の工房にて
第7章 キツネを捕らえる落とし穴
第8章 物事のありよう
第9章 帰還
第10章 逸脱
第11章 死後の世界
著者等紹介
グリーンブラット,スティーヴン[グリーンブラット,スティーヴン][Greenblatt,Stephen]
1943年アメリカ・マサチューセッツ州生まれ。ハーバード大学教授。『一四一七年、その一冊がすべてを変えた』でピュリッツァー賞、全米図書賞受賞
河野純治[コウノジュンジ]
1962年生まれ。明治大学法学部卒業。翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やいっち
81
本書は、「15世紀のイタリアのブックハンター ポッジョ・ブラッチョリーニが再発見した、写本をめぐる壮大な歴史物語。ローマ教皇ヨハネス23世の下で、秘書官・書記として仕えていたポッジョは、(中略)そして、そこで紀元前1Cの詩人ルクレティウスの『物の本質について』を発見する」物語。2023/06/05
ヘラジカ
60
15世紀ローマ、ルクレティウスの『物の本質について』が発見され、ルネサンス期を経てその哲学が浸透するまでを描いた歴史ノンフィクション。歪曲し圧殺したはずのエピキュリアンの思想は如何にして復活したか。何故真逆とも言うべきキリスト教社会に根をはるに至ったのか。多神教が敗北する過程や、ポッジョがブックハンターになり書物を発見するまでの経緯も含めて非常に面白かった。暴力的で野蛮な教皇庁には失笑したが、同時に相反する考えを取り込んでまで形を変えていくキリスト教の柔軟性にも驚かされた。良書。ただし邦題は大袈裟だろう。2021/02/11
syaori
43
1417年にイタリアの人文学者ポッジョが発見した一冊、共和制ローマの詩人ルクレティウスの『物の本質について』の写本を巡る物語。なぜルクレティウスの思想は千年近くも忘れらることになったのか、ドイツの修道院の片隅で眠っていた写本とポッジョの奇跡のような出合い、写本発見までの流れは推理小説のようでワクワクしました。読後、眠りから覚めたルクレティウスの思想が徐々に世界に与えた変化に一冊の本の可能性を思い、今読んでいる本も未来の大きな変化に繋がっているのかもと考えたりして、これからの読書がスリリングになりそうです。2016/11/03
白義
26
禁欲的なキリスト教文化が支配的だったルネサンス前後のヨーロッパで、修道院に眠る古典古代の写本を追い求めたブックハンター、ポッジョ。彼が偶然見つけ複製したルクレティウスの「物の本質について」は、美しき神々への賛歌に彩られながら神々の無関心を指摘することで無神論を予告し、その原子論によって唯物論を、目的なき自然という概念によってダーウィニズムすら先取りし、倫理的には苦痛ではなく喜びを肯定するというまさに近代性の震源とも言える危険な内容をはらんだテクストだった。小説のようなストーリーで語られる、驚嘆の文化史2015/08/30
yyrn
25
紀元前4世紀にすでに、太陽も水も人間も原子(アトム)でできている、地球が太陽の周りを公転している、地球の外周は約4万kmと把握されていたのに、①何故その後千年以上も忘れ去られたのか?②それが1417年にどのような経緯で発見されたのか?③再発見された後の展開はどうだったのか?を知りたくて読み始めたが、①では神の名の下に異教徒を殲滅させようとする戦いが続く中で知識が唾棄された暗黒時代の話や②の発見者の話が長くて(時間に余裕のある人が歴史を堪能しつつ読むには良いと思うが)新書に慣れた身には少しダレた。2021/01/14