内容説明
甲84号証―。北海道警察の元大幹部が裁判所に提出したA4判で四〇〇ページ近くもある膨大なその証拠文書には、裏金報道をきっかけに厳しく対立した北海道警察との関係修復を図ろうとする北海道新聞社の幹部らの「秘密交渉」の一部始終が詳細に書き記されていた。
目次
裏交渉ファイル―ロンドン、二〇〇八年六月
新聞大会―富山、二〇〇四年十月
謝罪要求―札幌、二〇〇四年十一月
駆け出し時代―小樽、一九八六年
裏金報道―札幌、二〇〇四年十二月
「道警に謝罪せねば」―札幌、二〇〇五年九月
不信、対立、そして混乱―東京、二〇〇五年九月
労働組合対新聞社―札幌、二〇〇五年十一月
「おわび社告」掲載―札幌、二〇〇六年一月
名誉毀損訴訟―ロンドン、二〇〇六年五月
法廷―札幌、二〇〇八年九月
結審―札幌、二〇〇九年二月
判決―札幌、二〇〇九年四月
真実―札幌、二〇一一年
著者等紹介
高田昌幸[タカダマサユキ]
1960年高知県生まれ。法政大学卒業後、1986年に北海道新聞社入社。本社報道本部次長、東京支社国際部編集委員、ロンドン支局長などを経て、2011年6月に同社を退社。2004年、取材班代表として、北海道警察裏金問題を追及する一連の報道で新聞協会賞、日本ジャーナリズム会議(JCJ)大賞、菊池寛賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
19
これは、作者が抑えきれない想いを吐き出すために必要な本だったのだと思う。徹底的に正そうとすれば、必ずその反対の力が働く。相手にした道警からも、また警察を相手に取材をしている取材仲間からも、反発がくるのは必須だ。正義はどこまで貫けばよいのかは難しいのだな。こちらを読んで、佐々木譲の「うたう警官」シリーズと「警官の血」シリーズで出てくる人物には少なからぬモデルがいるのだと思った。2013/06/27
さとむ
14
真実を暴くこと、さらに書き続けるとうことはいかに難しいことか。しかも、相手は警察。それをなした高田氏ら取材陣には敬服する。翻って、いま真実を伝えきれているメディアはいかほどか。政治、沖縄、原発などなど真実を伝えてほしい。偏りや秘密ではない「真実」が知りたいのだ。2015/03/28
ふぇるけん
12
北海道警察の裏金問題をスクープし、警察にもそれを認めさせて一時はマスコミの勝利と思われたが、その後は権力からの強烈なしっぺ返しが待っていた。執拗な質問責め、恫喝、締め出しなどの圧力をかけ続け、北海道新聞社は担当デスクと記者を結局は切り捨てる結果となった。そこに見えるのは組織の秩序維持のためには個人の犠牲を厭わない体質。組織の秩序に立ち向かうのはかくも困難を伴うのか…著者にはまた新たなステージで社会に斬り込んで欲しい。2014/07/13
どら猫さとっち
9
警察とは、こんなにも卑劣なものだったのか…。そして新聞もその都合のいいようにされたのか…。しかし、それでも立ち向かった記者がいた。本書は真実のために闘い続けた記者の記録である。苦々しい想いを抱えながら、追求していく姿は、感動という言葉だけでは陳腐すぎるのではと思うくらいだ。新蔵さんに激昂し、辞職を迫る著者が思いとどまり、「悪人はたどこにもいないのかもしれない」という箇所にはぐっときた。信念を曲げないことの強さを持ちたいと思わせる一冊。2014/05/24
ざび
9
報道するものたちは身勝手だと思う。書くことが正義だと勝手に思っている。でも、所詮は民間企業。権力には弱い。ここに書かれていることがその一つ。宮崎哲也氏によると今は官邸にTV局毎に専任がいて番組監視をしているとのこと。私はTVタックルの放映時間変更も圧力のせいだと睨んでいる。私は報道が全て客観的事実しか書かれていないなんて毛ほども思ってはいない。2014/05/18