出版社内容情報
ユダヤ教、キリスト教、イスラームという三宗教にとっての聖地であるエルサレムは、数世紀におよぶ十字軍遠征を契機に幾多の歴史的変遷をとげた。筆者は、これまでのキリスト教=西洋の自文化中心的な「二つの見方」による歴史的対応や認識に疑義を呈し、三宗教それぞれの立場と視点から複眼的に考察する「三つの見方」を提唱。その見方が歴史認識だけでなく、湾岸戦争をはじめとする現代の中東諸問題を考えるうえで、「新しい観察眼」をあたえることを明らかにする。中東をめぐる今日的問題にまで切り込んだ意欲作である。
▼塩尻和子(しおじりかずこ)=筑波大学助教授。専門は比較宗教学・イスラーム思想。
▼池田美佐子(いけだみさこ)=光陵女子短期大学専任講師。専門は中東近代史。
凡 例
序 文
理解と平和へ向かう旅のために
著者註
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第1部 歴史的展開
第-章 なぜ聖戦が始まったのか
聖戦のパターン/叫神との契約――聖戦の元型/神の国の戦闘/イスラームのジハード
第2章 十字軍のはじまり――新たなキリスト精神の希求
西洋精神の改革/聖地巡礼の熱狂/神の平和と騎士道/十字軍の召集/よみがえった聖戦
第3章 今日の紛争――ユダヤ人とアラブ人の新しいアイデンティティーの模索/ユダヤ人/アラブ人
第2部 聖 戦
第4章 十字軍とジハード(1096年
1146年)
動機と理想/恐怖と苦悩の記録/アンティオキアの苦闘/貧者の栄光と奇跡/エルサレムの殺戮/キリストの騎士団/無視されたジハード/ジハードの再認識
第5章 サダト大統領の死――聖戦と平和
ジハード放棄者の暗殺/ナセルとサダト/スンナ派とシーナ派の対立の始まり/ホメイニーのイラン革命/「フサインの物語」の意味するもの/サダトの計算ちがい/ジャマーアート・イスラミーヤの役割/シュクリーの出
現/サダトの「平和への旅」/アラブ世界からのエジプトの追放/学生の反抗/サダト暗殺以後
第3部 十字軍と西洋のアイデンティティー
第6章 1300年から現在まで――西洋における新しい十字軍
スペインでの三つの出来事/ヨーロッパでのユダヤ人への迫害/ルターの思想/清教徒とユダヤ教徒/理性の時代のイスラーム像/西洋のイスラーム支配/イギリスのユダヤ人政策/『ダニエル・デロンダ』/ワーグナー・ニーチェ・ヒットラー/バルフォア宣言とシオニズム
終章エピローグ――三つの見方
聖地への愛着/教会の鍵/対話と共存を求めて
訳者あとがき
内容説明
世界情勢を解く鍵になるか、聖地を巡る歴史的真実。ユダヤ教・キリスト教・イスラーム…同じ地に生まれた3宗教の不幸。そのもつれた歴史と構造をひもとくなかで、互いの対話と理解、平和共存への道を模索する。
目次
第1部 歴史的展開(なぜ聖戦が始まったのか;十字軍の始まり―新たなキリスト精神の希求;今日の紛争―ユダヤ人とアラブ人の新しいアイデンティティーの模索)
第2部 聖戦(十字軍とジハード(1096年~1146年)
サダト大統領の死―聖戦と平和)
第3部 十字軍と西洋のアイデンティティー(1300年から現在まで―西洋における新しい十字軍;エピローグ―3つの見方)
著者等紹介
アームストロング,カレン[Armstrong,Karen]
イギリスの宗教学者、1962年、17歳でローマ・カトリックの修道院に入り、67年、修道院から派遣されてオックスフォード大学で学ぶ。69年、修道院を離れるが、その間の精神的葛藤の経験をもとにして自伝的作品『狭き門を通って』を発表した。その後、『神の歴史』が世界的なベストセラーとなり、日本語を含め16か国語に翻訳された。82年にフリーの著述家、ブロードキャスターとなり、現在レオ・ベック大学で教鞭をとるかたわら、イギリス・アメリカで最も著名な宗教学者として、多くの問題提起を続けている。邦訳には上記の『狭き門を通って』『神の歴史』のほかに『キリスト教とセックス戦争』『楽園を遠く離れて』があり、いずれも柏書房刊
塩尻和子[シオジリカズコ]
1944年岡山市生まれ。67年大阪外国語大学アラビア語学科卒業、72年京都大学大学院修士課程中退、89年東京大学大学院博士課程修了、文学博士(東京大学)。現在、筑波大学哲学・思想学系助教授。専門は比較宗教学、イスラーム思想。著書に『イスラームの倫理―アブドゥル・ジャッバール研究』(未來社)、『ヨルダン―野の花の国で』(未來社)。主な論文に「コーランにみる世界の創造」(『創成神話の研究』、LITHON)、“Reason and Revealed Law in Mu’tazilite Ethics”(『哲学・思想論叢』第18号、筑波大学哲学・思想学会)
池田美佐子[イケダミサコ]
1955年北九州市生まれ。78年津田塾大学卒業、81年津田塾大学大学院修士課程修了、89年ブランダイス大学大学院修士課程修了、98年ハーヴァード大学大学院博士課程修了、Ph.D.(ハーヴァード大学)。現在、光稜女子短期大学専任講師。専門は中東近現代史。博士論文に“Sociopolitical Debates in Late Parliamentary Egypt,1944-1952”。主な論文に「マイルス・ランプソンとエジプト」(岩波講座『開発と文化』第2巻II、岩波書店)
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