出版社内容情報
古今東西を問わず,共同体は絶えず外部に「敵」を想定し,成員へのプロパガンダを間断なく行なってきた。その「見えざる敵」は,必ずイメージとして宣伝されたのである。著名なサイコロジストによる,異色の図像学。図像300点余収録。
序章 敵対人(ホモ・ホスティリス)―敵をつくりだす人間
第1章 敵の元型―敵意のイマジネーションの発現
第2章 敵意の心理学
第3章 敵意の未来―可能性の混成曲(メドレー)
第4章 現況―情けある戦士、慈悲深い敵たち、そして悲惨な戦い
終章 あとがき―親愛人(ホモ・アミクス)の教育
内容説明
敵意の幻想に楔を打ち込む、戦争心理の図像学。古今東西の《敵の顔》に隠されたレトリックを読み解くことからはじまる、無類のヴィジュアル・サイコロジー。恒久平和への意味に支えられた柔軟な構想が満載。
目次
序章 敵対人―敵をつくりだす人間
第1章 敵の元型―敵意のイマジネーションの発現
第2章 敵意の心理学
第3章 敵意の未来―可能性のメドレー
第4章 現況―情けある戦士、慈悲深い敵たち、そして悲惨な戦い
終章 あとがき―親愛人の教育
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
非日常口
30
誇張やハッタリは虚偽の隣人だ。これにより、テロリストは宣伝し私たちの中に眠る恐怖を刺激し肥大させるが、それは顔の見えない相手の話だ。おそらくホームグロウンテロの恐怖は、これまで外部と思われていた曖昧模糊とした敵の顔が、実は自分の帰属社会の顔かもしれないという捻れ現象を生むことだ。その奥に潜む憎悪は、新自由主義からくる構造的なストレスもあるが、我々は資本主義の暴走を止めるべく様々な規制やシステムを過去に取り入れてきた。それを見直し、場を共にする人間関係を強化することで、テロの温床を減らせるのではないか。2016/01/02
風見草
2
個人的にはイマイチ。事例分析というよりは理念・提言を打ち出す内容。事例分析を期待すると拍子抜けしてしまう。ただ、打ち破るべきは政府等により設定された"敵"ではなく、人間が抱く"敵意"だという理念は理解できる。また、紛争への対処など武力が必要な時もあると認める。その意味でも"大人の平和論"(訳者あとがき)だ。2014/05/03
yanapong
1
戦争プロパガンダ図像を通して見た「敵」の社会心理学的な分析・考察。加えて戦争・平和を巡る世界の未来像の考察と提言(メモ)。2012/06/22
真
0
戦闘員に求められる資質が蛮勇→冷静沈着、腕力→知性等というように反対のものへと変化してきたという記述は、大概の場合その通りだと感じた。戦争心理の中でもプロパガンダを中心に論じた書籍は初めて読んだが、掲載されていた多数のポスターには圧巻。2014/07/08
encore
0
戦争は性倒錯の最も広汎にみられる形態である、というテーゼに行き過ぎを感じるかどうかは別として頷ける提言は多い。要所でフロイトとニーチェが引用される。ポスターは芸術性のあるものが多く眺めるだけでも楽しい。2014/04/23