内容説明
協力か、裏切りか。多くの人が協力しようとするときに発生する社会的ジレンマ。その背後には、利己と利他のあいだで揺れる人間行動の機微が存在する。社会的ジレンマの回避は可能なのか。本書では、人間をはじめ動物の行動の進化や、学習による行動の変化を扱う進化ゲーム理論を案内役に解決への道筋を模索する。
目次
序章 自分勝手とはなにか
第1章 二種類の自分勝手の発見―囚人のジレンマとゲーム理論
第2章 上品、短気、寛容―進化ゲーム理論と協力の進化
第3章 協力するのはお得?―多人数協力の進化
第4章 闘争は回避できるか―社会秩序の始まり
第5章 共感と攻撃性のコントロール―ヒト社会への道
第6章 みんなに合わせる―現代社会と自分勝手
終章 自分勝手はやめられるか
著者等紹介
大浦宏邦[オオウラヒロクニ]
1962年京都府生まれ。87年京都大学大学院理学研究科植物分類学教室修士課程卒業。92年京都大学文学部哲学科心理学教室卒業。97年京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程卒業。博士(人間・環境学)。現在、帝京大学経済学部経営学科准教授。専門は数理社会学、進化ゲーム理論、社会的ジレンマ、秩序問題(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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香菜子(かなこ・Kanako)
31
人間行動に潜むジレンマ―自分勝手はやめられない?。大浦宏邦先生の著書。とても面白くて考えさせられる一冊でした。人間はそもそも自分勝手、自己本位、自己中心的で自己利益優先主義の利己的な存在。利他的よりも利己的な行動をしてしまうのが人間の本質、人間の性。人間不信、他人不信になってしまいそうだけれど、自分だって自分勝手で利己的な存在であるはずなのだから、お互い様なのかな。2018/12/28
ぷるぷる
0
もう完全に社会心理学という領域の話。自分勝手とは生物誕生の時代から脈々と続く問題であることがよく分かる。 何億年もかけて生物は進化して人類は現代社会を築いたわけだが結論的には未だに自分勝手問題は解決できていないんだと思う。本書の結びでもある個人の自分勝手に対処はできても集団単位で発生する自集団勝手は人のアイデンティティというか存在そのものという気がしてきた。いまでも会社で「部分最適」から「全体最適」とかいうスローガンを聞くがそれが社会システム的にいかに無茶なのかと自覚させられてしまった。2008/04/19