内容説明
本書は、国立国語研究所共同研究プロジェクト『日本語から生成文法理論へ―統語理論と言語獲得』の研究成果の一端を示すものであり、プロジェクト研究者による17編の論文を収録している。ラベル付けと言語間変異、統語知識の獲得、名詞句の構造と意味、省略現象の多様性、格表示と統語構造の5部から成る。それぞれの論文が、一般言語理論を発展させる契機となりうる日本語特有の現象を分析し、その理論的帰結を論じている。
目次
1 ラベル付けと言語間変異(弱主要部と言語類型論―日本語の文法的特質をめぐって;二重側方移動とラベル付け;二重焦点の格助詞脱落とラベル付けについて;スクランブリングか?ラベル付けに基づくアプローチ)
2 統語知識の獲得(ラベル付けの相対的普遍性―第一言語獲得からの示唆;ECP効果の獲得と間接否定証拠;幼児日本語における作用域の反再構築可現象)
3 名詞句の構造と意味(「‐方」名詞節の構造;日本語裸名詞の意味論;人称代名詞、指示語と主文現象)
4 省略現象の多様性(一人称空目的語と項省略;助詞残留現象;とりたて詞の分布とその省略への帰結;短縮回答―名詞句内分配解釈の可否からの示唆を求めて)
5 格標示と統語構造(主格目的語の移動と作用域;例外的格標示構文;例外的格標示構文の対格主語)