内容説明
「いま、ここにいない人やモノの声を聴く」―都会のへりのガケ下の町。鯨塚があるその町で、僕は“流星新聞”を発行しているアルフレッドの手伝いをしている。深夜営業の“オキナワ・ステーキ”を営むゴー君、「ねむりうた」の歌い手にしてピアノ弾きのバジ君。“ひともしどき”という名の詩集屋を営むカナさん、メアリー・ポピンズをこよなく愛するミユキさん―個性的で魅力的な住人が織りなす、静かで滋味深い長編小説。
著者等紹介
吉田篤弘[ヨシダアツヒロ]
1962年東京生まれ。小説を執筆するかたわら、クラフト・エヴィング商會名義による著作とデザインの仕事を行っている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しんごろ
204
誰もが悩み、苦い経験や過去を持つ。そんな人達が鯨の関わる町で交流を持ち、気がつけば町に活気をもたらし、交流が豊かになる。なんてことないことなんだけど、淡々として、時には寂しさや静けさも感じる。たけど、一歩一歩、前に進んでる。そんな普通の日常をあまりにもさりげなく書きあげる吉田篤弘ワールド。どう言えばいいのかわからないけど、印象に残らないけど、しっかりと映像は残ってる。夢見心地というべきか。そんな感じかな。吉田篤弘の世界観を堪能でき楽しめた。2021/08/07
KAZOO
130
吉田さんの一種の連作短篇で長編になっていて多くの人物が登場する群像劇のような感じの本です。13の話で、近くにある川はその昔に鯨が入り込んでそのまま化石化した話や昔の8mmのフイルムを映写する話やメアリー・ポピンズを愛している女性、あるいは子供のころに川を下って行っていなくなった子供のはなしなど様々な興味をもたらしてくれます。2024/10/26
シナモン
112
鯨の形をした崖の下にある町に住む人たちの物語。静かで詩的な文章、温かく優しい雰囲気。ゆっくりゆっくり読みたくなる。人はみな、冬に向かって生きている。読み終えたあと自分のまわりのささやかな日常を大切にしたいと思った。2025/01/28
nico🐬波待ち中
90
穏やかに流れるクラシック音楽のように、その物語は静かに進んでいく。かつて一頭の鯨が泳ぎついたとされる川。今は暗渠となって遊歩道の下を流れている。幼馴染みの3人の、忘れられない川にまつわる哀しい記憶。長年に渡り閉じ込められた記憶が蘇った時、物語は新たに再生される。時を戻すことは叶わないけれど、人生は何度でも再生して、何度でもやり直せる。たぶん、きっと、おそらくは。/去年単行本を読了。『屋根裏のチェリー』を読んでからの読み直しです。前は気付かなかったあれこれを発見し、改めて感動。次作が今からとても楽しみ。2021/08/28
Ikutan
83
都会のへりのガケ下の町が舞台。鯨塚があるこの町で『流星新聞』を発行しているアルフレッドを手伝う太郎が主人公。深夜営業の『オキナワ·ステーキ』を営むゴー君。メアリーポピンズをこよなく愛するミユキさん。三人には忘れられない過去がある。この町にはかつて川が流れていたのだ。そして鯨が眠っている。ピアノ弾きのバジ君。詩集屋のカナさん。ヴァイオリン弾きの丹後さん。流し目のハルミさん。個性豊かな住人たちの滋味溢れる穏やかな物語。先に『屋根裏のチェリー』を読んだので、そんな経緯だったんだなぁと振り返りつつ味わいました。2021/11/18
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