内容説明
日本橋北詰の魚河岸のほど近く、「丸九」という小さな一膳めし屋がある。うまいものを知る客たちにも愛される繁盛店だ。たまのごちそうより日々のめしが体をつくるという、この店を開いた父の教えを守りながら店を切り盛りするのは、今年二十九となったおかみのお高。たとえばある日の膳は、千住ねぎと薄揚げの熱々のみそ汁、いわしの生姜煮、たくわん漬け、そして温かいひと口汁粉。さあ、今日の献立は?しあわせは、うまい汁とめし、そしてほんの少しの甘いもの。おいしくて、にぎやかで、温かい人情派時代小説。
著者等紹介
中島久枝[ナカシマヒサエ]
東京都生まれ。学習院大学文学部哲学科卒業。フードライターとして活躍し、讀賣新聞夕刊にて「甘味主義」を連載中。『日乃出が走る 浜風屋菓子話』で第3回ポプラ社小説新人賞の特別賞を受賞し、作家デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しんごろ
191
ありふれた時代物の料理小説ですが、なかなか良かったですね。この作品で登場する料理は至ってシンプルイズベスト!ご馳走がでるわけではないのですが、それがかえっていいのかな。普通が一番と感じましたね。ほのぼのとして、温かさを感じる作品でした。これは続編でてほしいね。2019/06/16
タイ子
66
父親のあとを継いで一膳飯屋を営むおかみと常連たちの交流の物語。よくあるお料理小説です。料理の品数があつあつの白飯に汁物、魚料理、煮物、漬物と甘味のあっさりしたところに余計美味しさを誘う。常連の所有する竹林で旬の筍を焼いて食べるシーンは羨ましかったな。おかみの縁談話もあり、でも胸の奥に秘めてる男性の面影を追ってる姿とそれを見抜く粋な常連の言葉にホロリ。人情と美味しい料理、よくある作品ではあるけど作家さんによって違ってくる美味しそうな本にはつい手が出てしまいます。2019/04/29
ともくん
44
自分のいちばん好きな、江戸の人情物語。 一膳飯屋の女将といい、五と十の日は夜にお酒を出すことといい、「みをつくし料理帖」の設定と瓜二つ。 これが面白くないわけがない。 これからも楽しみなシリーズ。2022/07/28
Nyah
42
日本橋北詰にある「丸九」という一膳めし屋。店主はおかみのお高。先代はお髙の亡き父で英(ハナブサ)という料亭で板長だったが、病床の母の側にいる事、働く男達に美味い飯を食べさせてやりたいと始めた。お高は「人の体は食べたもんで出来ている。たまに食べるごちそうじゃなくて、毎日食べるおまんまが大事なんだ」という父の教えを守る。白飯一汁に魚料理、一菜、そして小さな甘味。他に五と十のつく夜は店を開く。高田郁のみをつくしのようですが、主人公は既に29、かなりしっかりしてます。/美味しい食事にお節介な人々。こういうのも良い2021/12/26
ジュール リブレ
39
明日からの出張に和食を持って行こうと有楽町の三省堂で買ってきたのに、帰りがけの電車から読みはじめて、止まらずに読了しちゃいました。。。江戸の女性料理人をヒロインにした何冊か。日替わりの定食も、季節感と、江戸前の仕事の細かさとで、美味しそうなこと。義理人情に厚い江戸の町の、束の間の美味しいごはんのひと時を堪能させていただきました。次回のメニューは、なんだろう。楽しみですね。2019/11/01