内容説明
蜂蜜をもうひと匙足せば、あなたの明日は今日より良くなる―。「明日なんて来なければいい」と思っていた中学生のころ、碧は見知らぬ女の人から小さな蜂蜜の瓶をもらった。それから十六年、三十歳になった碧は恋人の故郷で蜂蜜園の手伝いを始めることに。頼りない恋人の安西、養蜂家の黒江とその娘の朝花、スナックのママをしているあざみさん…さまざまな人と出会う、かけがえのない日々。心ふるえる長篇小説。
著者等紹介
寺地はるな[テラチハルナ]
1977年佐賀県生まれ。2014年『ビオレタ』で第4回ポプラ社小説新人賞を受賞しデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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しんごろ
389
翠、安西、朝花、麻子、あざみ等、それぞれに一長一短の性格はあし、それぞれの育った環境もあるけど、それぞれ居場所を求めて足掻いてる感じがした。(安西には共感できないけど…)。安西の父親には嫌悪感が感じるが、この人も居場所を探している気がします。(共感は全くできないが…)完璧な人間なんていないよね。そんな中、黒江には、男としては格好いいなあと思うし憧れる。自分も日々学び前を向いて生きる歓びを感じたいです。それはさておき、養蜂園が舞台。どんな料理でもいいから、蜂蜜を使ってる料理を食べたくなりました。2019/12/07
さてさて
374
『養蜂』の世界で今日も『蜂蜜』を生み出し続ける『蜜蜂』と、それを飼い慣らす養蜂家・黒江、そして『養蜂』を学ぶ碧が、様々な人と人との繋がりの中で、明日に続く今日を生きる姿が描かれるこの作品。『蜜蜂が一生かかって集められる蜜の量が匙一杯分』という『蜂蜜』を口にする碧が『今わたしが口にしたのは、蜜蜂の一生だ』と思う瞬間に神々しさも感じるこの作品。寺地さんの物語の王道とも言える『どうしたいか、どこへ行きたいかが大事』という言葉を噛み締める結末に『蜂蜜』を物語に上手くブレンドした寺地さんの上手さも感じる作品でした。2022/10/27
やすらぎ
298
この扉を開けなければ永遠に閉ざされてしまうのだろう。もう終わり。そうならないために今しか出来ないことがあるはず。どんなに辛くて悲してもそれが感情。大切なものを守りたい、その正しさは一つではないから。花が咲けば蜂が舞い黄金の蜜が輝く。小さな自然が集めてくれた甘みをひと匙掬って焼きたてのパンケーキに溶け合っていく。立ちあがるほのかな香りにずっと満たされていたい。幸せはほんの一瞬なのかもしれないけど、それでも俯いたり見上げたりしながら、道端の花を探し歩いていく。明日は笑顔になれていたらいいなって誰しも願うから。2023/05/18
エドワード
240
いじめられて絶望していた中学生の碧は、「蜂蜜をもう一匙足せば、あなたの明日は今日よりよくなる」と蜂蜜の瓶をくれた女性に救われた。冒頭の言葉がすでに物語の本質を語っている。30歳の碧は、恋人の故郷の地方都市を訪れるが、結婚話は暗礁に乗り上げ、自活のために養蜂業を営む黒江に弟子入りする。花と蜂が作り出す蜂蜜の神秘、碧が次々と考え出す蜂蜜を使ったレシピが存分に描かれる面白さ。広い土地が必要な養蜂業と都市開発の葛藤も描かれ、物語は意外な方向へ進む。<自分が悪者になろうとする>黒江の心理も何となくわかるね。2019/07/23
kotetsupatapata
213
星★★★★☆ 冒頭から1日でバイトを辞めた安西や、恋人の気持ちを先回りし考え過ぎて行動に移せない碧に加え、暴君たる安西父に少しイライラしながら読み進めましたが、見ず知らずの土地で奮闘する碧のバイタリティー溢れた行動は、「自分の居場所は自分で見つけ出す」ということを教えてもらいました。 "縁"というのは与えてもらうものでなく、その縁をいかに自分の人生に生かしていくか、碧はあざみさんや三吉さんとの縁を上手に生かし居場所を見つけたのですね。 皆がちょっとずつ幸せに踏み出していく淡い余韻を残したラストでした 2022/01/23
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