内容説明
港町で三代続く老舗洋食屋「キッチン風見鶏」。おすすめは、じっくりと手をかけた熟成肉料理だ。漫画家デビューを夢見るウエイター・坂田翔平は、幽霊が見えてしまうのが悩みのタネ。お客さん一人ひとりに合わせた料理が好評なオーナーシェフ・鳥居絵里は、家族の健康を案じつつ空元気を出して奮闘中!誰しも未来は不安だし、人生は寂しいものだ。でも、だからこそ、自分の心に嘘をつかずに生きていく―。美味しさとやさしさが溢れる傑作長編。
著者等紹介
森沢明夫[モリサワアキオ]
1969年生まれ、千葉県出身。早稲田大学人間科学部卒業。2007年、『海を抱いたビー玉』で小説家デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しんごろ
479
老舗洋食屋さんでのほのぼのとしたお話ですが、さすがは優しさの固まりのような森沢作品。心に響く温かい言葉もあり、時には胸がキュンと、時には涙腺がゆるみそうになり、登場人物全員、温かく見守りたいですね。当然、洋食屋さんを舞台にしているので、料理も美味しそうです。他作品からの一瞬の友情出演という粋な演出も加わって楽しめ、癒しと優しさの余韻がいつまでも残りそうです。2018/07/30
小梅
446
やはり森沢作品は好きです。宣言通り仕掛けがいくつかありました。読了してからプロローグを読み直しました。他の作品がリンクしてるのを見つけると、作者からのサービスにファンとしてはとても嬉しいです。 原作者情報で早くも重版だそうです。2018/06/28
ろくせい@やまもとかねよし
352
とても素敵な物語。幽霊も登場するSFを上手く用い、老舗レストランで繰り広げられる日常を5名+1名が交互に語る。幽霊と実存人物からは利他的おもいやりが溢れ、それらは血縁に依拠しない家族らしさで括られていく。その利他的おもいやりは決して強要せず、言葉を尽くして最後まで追い込まず、絶妙な調和として表現される。3つの描写が強く心を打ち、感涙を誘った。人生「だからこそ」周囲のおもいやりを尊重し「在ることの幸せ」を大切に「死ぬときに後悔しない生き方」と。このような感心を与えてくれた森沢さんの表現に尊敬と感謝したい。2019/06/23
しんたろー
287
森沢さんの文庫書下ろし新作。優しさに満ちたファンタジーで、相変わらず素敵な言葉も散りばめられ、『きらきら眼鏡』の一節もファンには嬉しかった。洋食屋の女性シェフ、その母親、漫画家志望のウエイター、常連客シングルファザー、常連客女性占い師、ほぼ5人の視点で描かれた物語は、何気ない日常の描写を慈しむように表現されていて、それをファンタジー&ラブ要素が盛り上げていた。徐々に「人を思いやる」気持ちがジンワリ伝わってきて目頭が熱くなるシーンも多かった。エピローグも綺麗に纏まっていて「これぞ森沢節」という作品で満足!2018/06/18
kanegon69@凍結中
286
帯通り、「仕掛け」にときめいてしまいました!やっぱり話の構成が非常に素敵。二組のカップルの微妙な心理状態の変化、でもそれぞれに暗い過去や苦しいことを背負っていても、森沢マジックにより、じんわりと温かい。そして今回はファンタジーの要素がプラスされている。私はこの気持ちの温かくなるファンタジーが大好きだ。そしてエピローグでの展開が実に見事。感激してしまいました。そういうことだったのかぁ、というのと、時の流れにじんわりと温かい気持ちがこみあげてくる。そしてどうしてもまたプロローグに戻るしかないのだ。素敵だぁ!2019/09/15