出版社内容情報
あの「ブラバン」の著者がハルキ文庫にいよいよ登場!!
内容説明
編集者の柳楽尚登は突然会社を解雇され、吉祥寺の家族経営の立ち飲み屋で料理人として働くことに…。しかも店の主が引退、長男の「ぐるぐる」に拘るカメラマン・雨野秋彦によって、エスカルゴメインのフレンチの店に改装するという。日本三大うどん、かんたん絶品チーズキツネ、ナポリタンなピザグラタン…。奇才・津原泰水が本気で挑んだ、エンターテインメント料理小説!
著者等紹介
津原泰水[ツハラヤスミ]
1964年広島市生まれ。青山学院大学国際政治経済学部卒業。89年、津原やすみ名義で少女小説作家としてデビュー。97年より現名義で話題作を相次いで発表し、12年『11』が第2回Twitter文学賞国内部門第1位、14年「五色の舟」(『11』収録)がSFマガジン「オールタイム・ベストSF」国内短篇部門第1位となる。同作は近藤ようこが漫画化し、第18回文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nico🐬波待ち中
101
螺旋フェチにまんまと担がれてエスカルゴ料理の店を任されることになった尚登。今までエスカルゴ=カタツムリ=虫と思っていたけれど、エスカルゴって陸の巻き貝なんだ…。私が居酒屋で食べたエスカルゴは恐らくアフリカ・マイマイ。本場のエスカルゴが食べたくなった。料理とは出会い、という尚登。人と人との出会い、知恵と知恵との出会い、素材やレシピ同士の出会い。エスカルゴを通して出会った「家族」が食卓を囲んで楽しそうに食べていた夜食が美味しそうで羨ましい。ノリとテンポの良い文章で読みやすかった。因みに私、うどんは讃岐派です。2018/01/09
sin
80
主人公が松阪に到着した場面まで読み進めた時に、松阪駅で乗り換えた。主人公が伊勢うどんを食した後に、ひさしぶりに伊勢うどんを食べた。家を出る時に何気に手にした一冊が見事にシンクロした。悪気はないけど独断的な経営者たちに、編集者だった主人公が料理人に追い込まれていく、目覚めていく!最近の傾向ではブラック企業云々に話が終始しがちだが、なにより主人公の仕事に前向きな姿勢が好ましい!でもこのまま想いを告げず“Fin”として幕を閉じてしまっていいのだろうか?2017/12/06
めしいらず
77
このベタベタのご都合主義は大いに結構だ。著者が楽しんで書いているのがこちらにも伝播してくる楽しい読書。これは吉祥寺を舞台にしたキャピュレット家(伊勢うどん)とモンタギュー家(讃岐うどん)のあの物語だ。人間万事塞翁が馬。理不尽に思われた運命に「負け戦を覚悟しながらも共感してくれる人々の存在を信じて、自分にとってグッとくる物を真剣に追い求める」こと。人は心の持ちようでどんな形ででも花開けるのだ。料理は出会い。素材と素材、知恵と知恵、そして料理が繋ぐ人と人との。大切な人々と呑んで歌って食する幸せよ。それと猿渡!2018/10/01
なる
67
現代で幻想小説を得意とする作家といえば、と紹介されて、たまたま書店で手に取った本作を読んでみる。どんなエロ・グロが…と思いながら読んでみたら完全なエンタテインメント小説で逆に驚かされる。調べてみると作家のジャンルは多岐にわたるという。幻想小説を主としていながら、こんな面白い娯楽ストーリーまで書けるというその振り幅に却って他の作品への期待も高まってしまう。キャラクタが際立っていて安心して読めるし、何より料理がどれも美味しそう。貝ダメだからエスカルゴも多分ダメだけど、作中に出てくる料理を食べてみたくなる。2021/07/29
森オサム
53
とにかく面白い。料理、お仕事(飲食店経営)、恋愛、そして家族、の各要素を入れながら、ドタバタコメディとして突き抜けた読み心地。しかしながら事はそう単純でも無く、主人公の運命の転がり方や各キャラクターの設定、言動は、相当クセが強い。うどんの勢力争いはクドイし(笑)。その、少しイラッと不愉快になりそうな所を、大げさな演出が笑いにしてくれていた。そんな読み易くて楽しい話で有ったが、終盤からラストはちょっと意味不明な展開になっていて、この一筋縄ではいかぬ感じが著者らしく、作家性も強いエンタメとして素晴らしかった。2022/09/24