内容説明
ベテラン放送作家の工藤正秋は、阪急神戸線の車内アナウンスに耳を奪われる。「次は…いつの日か来た道」。謎めいた言葉に導かれるように、彼は反射的に電車を降りた。小学生の頃、今は亡き父とともに西宮球場で初めてプロ野球観戦した日を思い出しつつ、街を歩く正秋。いつしか、かつての西宮球場跡地に建つショッピング・モールに足を踏み入れた彼の意識は、「いつの日か来た」過去へと飛んだ―。単行本刊行時に数々のメディアで紹介された感動の人間ドラマ、満を持して文庫化!
著者等紹介
増山実[マスヤマミノル]
1958年大阪府生まれ。同志社大学法学部卒業。出版社に3年間勤務後、放送作家に。放送作家としては、関西の人気番組「ビーバップ!ハイヒール」(朝日放送系)のチーフ構成などを担当。2012年、「いつの日か来た道」で第19回松本清張賞最終候補に。同作を改題した『勇者たちへの伝言』でデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
🅼🆈½ ユニス™
144
野球に出逢って野球を愛し、野球から勇気を貰った人達の生涯を描いたメルヘンチックな一冊です。- 本を読みながら創設9年目のシーズン、星野仙一監督の率いる東北楽天ゴールデンイーグルスが球団史上初のパリーグ優勝・日本シリーズ優勝を思い出す。めちゃくちゃ応援&興奮&感動したあの時の記憶が生々しい - ✉️ 何のために生きているのか分からなくなった時、自分がしてきたことが無駄だったんじゃないかと過去を悔いたくなった時に是非とも手に取って欲しい一冊 ✉️2018/09/25
あすなろ
116
阪急ブレーブス。ブレーブスは、勇気。そんな懐かしい球団名と言葉の持つ意味から転じて、様々な人々の人生が描かれる。ありえぬ展開より人々を結びつけるのは些か強引さあるファンタジーだが、いろいろ考えさせられ、勉強させられた。帰国事業のことを何処まで知っているのか?はたまた亡父への憶い。中でもやはり帰国事業を現代迄通じて描いているのは瞠目させられる。本作の元題は、いつの日か来た道。読了後、含蓄ある題と感じた。2016/04/22
さんつきくん
108
主人公は中年の放送作家。置かれた現状にもんもんとする日々を過ごすなか。ある日、導かれるように西宮球場跡地のショッピングモールを訪れた主人公は阪急ブレーブスを初めて見た日にタイムスリップする。その折、すでに亡くなった父・忠秋の秘密と父親の初恋の相手「安子」の存在を知る。両思いだった二人だったが、在日朝鮮人だった安子は「帰国事業」で北朝鮮へ帰ってしまう。一番の衝撃は「手紙」の章。安子が過ごした北朝鮮での極貧の日々の描写が読んでて辛かった。これでもか、これでもかと衝撃的な描写の連続だった。2015/12/20
おかむー
106
全体をとおしてはいいお話、ただ物事の背景の描写とか会話が説明的になって話の流れが滞ったり、物語の本筋がどこへ向かうのかわかりづらいちぐはぐな印象が惜しい。『“かなり”よくできました』。今は無き阪急ブレーブスを軸にしたプロ野球黎明期にまつわる人情話かと思いきや、中盤あたりから北朝鮮帰国事業の悲惨さに移行する。最終的に話はうまくまとまるのだけれど、エピソードがほぼ過去の回想ばかりなので数巻ある長編のダイジェストっぽく感じられてしまうところが惜しいかな。とはいえ読み終えてみればとてもよい物語ですよ。2016/06/25
さおり
105
この本はもっともっと登録数が増えるべき本だ!まだの人はみんな読んでください。この表紙・きいたことない作者・「又吉さんオススメ」の帯では、手に取ることはなかったでしょう。オススメしてくれたお気に入りさんにただ感謝です。私が苦手なファンタジー、そこが気にならずに物語に夢中になれたのは、その他の大部分で、事実を丁寧に丁寧に描いていたからだと思います。泣いたねー。これは、泣くしかなかったねー。あぁ、みんながこのお話を読んで、この熱意が伝わる感想を私の代わりに書いてくれますように!(他力本願は私の特技)2016/02/04