内容説明
日本橋の木綿店の通い番頭・半兵衛の長男として生まれ、十三歳で父と死に別れた半七。道楽肌の彼は、堅気の奉公を好まず、神田の岡っ引き・吉五郎の子分になる。一年ばかりその手先として働いているうちに、いよいよ功名をあらわすべき時節が到来した―(「石燈籠」)。“元祖・捕物帳”の『半七捕物帳』は、絶妙なトリックと正確な時代考証を誇るがゆえに、数多くの捕物帳の中で別格の“最高傑作”ともいわれる。その珠玉の全六十八編から、半七初登場の「お文の魂」をはじめ、彼が十九歳から二十五歳の間に解決した事件を中心に綴られた六編を厳選。江戸の町を、若き日の半七親分が駆ける!
著者等紹介
岡本綺堂[オカモトキドウ]
1872~1939年。東京芝高輪生まれ。新聞記者を経て、劇作家、小説家、劇評家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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🐾Yoko Omoto🐾
126
岡本綺堂初読み。何だこれ!!猛烈に面白いではないか!!しかも100年も前に書かれた作品だとは思えないほどのこの読みやすさ。明治に生きる“わたし”が、江戸時代に岡っ引きとして活躍した半七老人から当時の不可思議な事件や手柄話を聞くという構成で、推理ものや怪談じみた出来事など幅広く展開される。シャーロック・ホームズを敬愛していたという氏が描くまさに江戸版ホームズと呼べるシリーズだろう。読者が推理するには情報が後出しとなるような話もあるにはあるが、“謎を解く半七の物語”として十二分に楽しめる。本当に面白かった。2016/04/07
ぶんぶん
18
【図書館】いろいろと出版してる「半七捕物帳」初手柄編という事で、年代別になっている。 半七捕物帳を全編を読んでいる私も面白く読んだ。 元々、岡村綺堂の書き方が読み易いという事もあって、ミステリーと怪談の取り合わせに面白味があるせいだろう。 年代別に読むという事は面白いのかも知れない。 続巻があるか調べてみよう。2025/05/26
kayak-gohan
14
捕物帳の嚆矢とされる本作。かつて目明し(岡っ引き)だった半七老人の回顧談の形式を取っている。手の込んだ事件でもわずかな手がかりも見逃さない慧眼は、さながら日本版シャーロック・ホームズ。神田三河町をホームグラウンドにしていた半七親分だが、語りの中で出てくる江戸の地名と距離感がほぼわかるので面白く読めた。「夢の島」の前身は十万坪と言われ、江戸時代からゴミ捨て場だったことも興味深い。妖怪譚みたいな事件もあるが、結局はその殆どのからくりが人間の心のおぞましさがなせる業。 昔も今も人間の性はそう変わらないらしい。 2022/02/04
tako
5
100年前に書かれた「捕物帳」の元祖(らしい)。名前はもちろん知っていたけど、読むのは初めて。幼いころに叔父の友人から不思議な物語を聞いた新聞記者である「わたし」が、怪談話のようなその謎をきれいに解決した老人・半七に知己を得て過去の手柄話を聞く、という構成。江戸と明治を行き交う感覚が新鮮で面白かった。設定描写の丁寧さに対して謎ときは意外にアッサリ。半七親分もサッと出てきて、サクッと解決してしまうので今回の作品ではイマイチ(親分本人の)魅力が伝わってこない感じ。年齢を重ねた時代の事件ならまた印象が違うかな。2015/01/21
めにい
4
100年前の元祖・捕物帳。昔話を語る形式なので、謎はあっという間に解かれてしまうが、江戸の雰囲気が生き生きと伝わる。しかも明治の良さが語り口の端々に見えるところがまたよい。2014/12/12