内容説明
ゆく宛のない旅の中、見知らぬ駅に降り立った笹森。「夜見」というその街で唯一の旅館に泊まることになった彼は、酒場で小夜子という女と出会う。彼女と街の不思議な魅力に捕らわれて、数日間この街に滞在するうちに、この土地に伝わる悲劇の伝説と、二年前に起きた旅行者の失踪事件を知ることになる。時間の流れが止まったようなこの街で何が起ころうとしているのか?幻想的な古都を舞台に描くサスペンス&ホラー、待望の文庫化!
著者等紹介
樋口明雄[ヒグチアキオ]
1960年山口県生まれ。南アルプスの麓で、釣りと野良仕事のかたわら、冒険小説の執筆にいそしむ。2008年『約束の地』で第27回日本冒険小説協会大賞と第12回大藪春彦賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まさ
26
単行本で読んでとても印象に残っているので文庫本で再読。 タイトルと表紙が変わってしまったのだけど、どちらも単行本の方が好きだなぁ。内容に惹かれるのは、舞台となる町にデジャブを感じるからかな。だからこそ、魅入ってしまい抜け出せなくなる。主人公のように。樋口作品のイメージとは違うのだけど、惹かれてしまう。2020/06/30
Yu。
26
彼は呼ばれるべくしてそこへ辿り着いたのか‥ ただの古い田舎の街へなんとなしに足を向けたのだが、この地はその昔一度消え去った曰く付きの土地だったのだ。。なかなかいいねえ‥ 静かにじっくりと迫り来る恐怖感がたまらなく、哀しくも切ない終着が待ち受ける怨恨ホラー。2017/09/23
ヤスヒ
11
古都を舞台にしたサスペンスホラー。主人公の笹森が行くあてのない旅の途中に「夜見」という駅に立ち寄った事からストーリーが始まる。時間のとまったような、そして何かしら幻想的な雰囲気が漂うこの街で次々とおこる怪事件。キーワードの「火」とこの土地に伝わる伝説が重なり合い、読んでいる間はまるでこの街に彷徨い込んだような何だか不思議な感覚に陥った。妖しい雰囲気を醸し出すのが本当に巧い。ただそれだけにオチがもうちょっと何とかならなかったのかと・・・それだけが少し残念だった。2016/01/18
ゆう
4
★★★★ 冒頭から日本人であれば感じ入る郷愁が、丁寧に散りばめられている。一つ一つの言葉の選択は細部まで計算され、幽玄な作品世界に読者を誘い込む。主人公が木橋を渡った頃には、読み手も同じく幻惑の橋を渡りもう後には戻れない。閉鎖的な古びた町で起こる数々の怪異。徐々に明らかになる悲哀の連鎖。美しく、切なく、恐ろしく。見事なまでにこの幽玄世界を描き切っている著者の力量に脱帽。今の時期に読むのが最高のタイミングである。2017/07/24
桜
4
樋口さんのホラーは初読み!どうかな…と思っていたが、気になっていたので読んでみた。……やっぱり樋口さんは山岳小説がイイ。本作は、個人的には。。。設定的にはおもしろいと思うし、伝説や時代に取り残された街の描き方もおもしろいと思う。ただ、オチが…。えぇ…そのオチ!?って感じ。ホラーは確かに非科学的だけど、超常現象かぁ。個人的な好みだろうけれど、ホラーならホラーで、心霊現象で最後までもっていってほしかったな。2014/05/11