内容説明
プロのスカウトからも注目されている、超高校級ピッチャー西沢素晴。甲子園への道を断たれ、同時に母までも失い、失意と絶望の中にいた素晴のもとへ「想い出チケット」なるものが届けられた。このチケットがあれば、「想い出」を手に入れられるのだという。失うものが何もない素晴は「想い出チケット」に記された場所へと向かうのだったが…。小松左京賞作家が描く、切なくて、心温まる感動のストーリー。
著者等紹介
上杉那郎[ウエスギナロウ]
1962年生まれ。日本歯科大学卒業。現在新潟市在住。『セカンドムーン』で第8回小松左京賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しんごろ
95
舞台は神奈川県。高校球児が過去にタイムスリップして、両親の事でああだこうだとする話!話の設定としてはいい話ですし、伏線も回収しながら、ラストはせつなく、グイグイとスピード感もあり引きこまれしたが、試合シーンで、セオリーでは、それはありえないだろうというシーン(たぶん)が描写されてたのが、それが妙にひかかってしまいました(^^;)面白いんだけど惜しいというのが、率直な感想です(^^;)2017/01/09
散文の詞
91
青年が自分の生まれる前の過去に行って、そこでの経験を自分の思い出(記憶)にする。発想が面白いし、会話中心の文体は読みやすいのだが、疑問に思う点もあるし、感情表現が乏しくて、過去へ帰ったことを現したいせいか全体的に希薄な気がするが惜しい。 特に、過去へ帰ったわりには、必要ない部分は省いたような書き方のせいで、短い気がする。 例えば、過去で寝るとどんな夢を見るのか、未来から持ってきた物を過去に残したままで未来は変わらないのかとか。 もっと書き込めば読み応えがあって面白くなったかも。 2020/05/11
5 よういち
74
超高校級ピッチャーの西澤素晴はプロのスカウトの目にも留まる逸材であったが、ある日、甲子園の道を閉ざされてしまう。そんな折に植物人間だった母が命を落としてしまう。絶望の中にあった素晴の元に『想い出チケット』が届けられる。両親が生きた時代にタイムリープして両親とともに想い出を探す?(作る?)。◆あまりにも悲惨な過去だが、過去は変えられない。変えようとして行動することは過去になり、未来につながる。結果として同じ結末を招く。ラストが余りにも切な過ぎる。母・美樹の言葉に涙腺が崩壊しそうになる。そして素晴の言葉にも。2018/11/28
エンリケ
34
過去にタイムスリップして若き両親と出会うお話。思いっきり既視感の有る内容。でも主人公が高校球児というところがミソ。試合のシーンにはつい手に汗握る。嘗ての両親はエースとマネージャー。両親との触れ合いや愛情に恵まれなかった彼が、その裏事情を探って行く。細かい事は抜きにしてグイグイ引っ張られる面白さ。純粋に次の展開が気になって一気に読めた。特に終盤は怒濤の展開。そして最後は切ない幕切れ。初めて彼は両親の自分への愛情を実感する。過去に戻るお話にはやはり惹かれてしまう。それは人類共通の願望なのかも知れない。2017/07/07
Mark
28
面白い。エンタメですがなかなかどうして、引き込まれますね。父親の失踪の理由がこうだったとは。切ない。それでも、最期の最後の美樹の言葉が忘れられません。2017/09/07