内容説明
「待っているわ…」明日上方へ旅立つ男からの告白に幼い感傷で応えてしまったおせんが、その一途さゆえに歩むこととなった苛酷な生涯を描いた恋愛小説の傑作「柳橋物語」、万年補欠とも称すべき武家の四男としての人生を堂々とまい進する青年とその家族の物語「ひやめし物語」、あまりの世間しらずに幽霊たちもたじたじ…講談調の滑稽譚「風流化物屋敷」。人間の諸相を巧みに、鮮烈に描き出した三篇を収録。
著者等紹介
山本周五郎[ヤマモトシュウゴロウ]
1903年、山梨県生まれ。横浜市の西前小学校卒業後、東京木挽町の山本周五郎商店に徒弟として住み込む。1926年『須磨寺附近』が「文藝春秋」に掲載され、文壇デビュー作となった。『日本婦道記』が1943年上期の直木賞に推されたが、受賞を辞退。1967年2月14日没。享年63歳(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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も
65
小さくても橋がひとつあったなら、運命は変わっていたのかな。でも橋があったらおせんはずうっと本当の気持ちに気づかなかったのかもしれない。自分の気持ちに気づいたおせんは前よりずっと強くなって、自分の力で運命を切り開いていけそうな気がした。2作めの「ひやめし物語」はぽわっとしててかわいらしい話でした。のんびりした主人公がいい味出してます。2016/04/09
ヒデミン@もも
46
授業の課題の作品なので、何回も読んでしまった。先生の講義を聴くとまた感想が変わる。しかし、これはやっぱり男性が書いた恋物語だと思う。2017/06/10
文庫フリーク@灯れ松明の火
44
禍福はあざなえる縄の如しと言うけれど、禍多くして福僅かな主人公おせんが切ない。天のもたらす禍・人のもたらす禍。若さゆえの一途さは誤解招き、人の口に戸は立てられぬ道理。それでも僅かな福・庶民の情がおせんを破滅からまぬがれさせ、人でなしにさせない。エピローグはおせんの成長と自立感じさせて、幸太郎との未来に希望を灯す。山本周五郎さん描く庶民の人情が胸に痛い。あさのあつこさんの『強い女がいるわけではない。強くなった女がいるだけなのだ』この物語の的を射抜いた解説。2011/06/10
愛 飢男
20
三つの物語で構成されているが本のタイトルになっている柳橋物語が頁数をほぼ占めており残りの分はおまけみたいな感じ。 読後感は清々しい。江戸の火事で偶然に出会った赤児への献身的な愛情、涙を誘います。2015/07/19
T2y@
13
初めての山本周五郎作品は、江戸時代中期 下町での物語。 コミュニティにおける、ウワサ噺と思い込みで、大きく人生を左右されてしまう『おせん』 今よりも情報ツール・インフラが発達していなかった時代ではあるが、情報が溢れる今でも、ウワサと、思い込みに悩まされている点は何も変わらない。 一途、頑固、横恋慕。昔も今も、同じ「ひと」が其処に居る。2014/03/04