内容説明
“しようもなくて/花をうかべて/ながめて”(「泉“A”」)。童話作家として世に知られる新美南吉は、二十九年七ヶ月という短い生涯のなかで数多くの詩も遺した。「南吉の魂にはまだ生まれない詩、まだ言葉になっていない詩が、泉のように地下水のように湛えられていたのではないでしょうか」(巻末エッセイより)。自然や季節の移ろいを鋭敏に感受した南吉の、のびやかな明るさや清冽さ、透明感に溢れた厳選一二六篇を収録。
目次
1 風の光にほめくべし
2 カタカナ幻想
3 春の電車
4 枇杷の花の祭
5 気まぐれな思想家
6 寓話
著者等紹介
新美南吉[ニイミナンキチ]
1913年、愛知県半田市に生まれる。1932年、東京外国語学校(現・東京外国語大学)に入学。この年、童話雑誌「赤い鳥」に「ごんぎつね」が掲載される。1936年、東京土産品協会に勤めるも、喀血のため帰郷。代用教員を経て、安城高等女学校の教諭となる。1943年、30歳の誕生日を目前にして、結核により逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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芽
55
動物や虫の詩がなんとも可愛い。 とくに「ひよこ」の『尻もちをつくといふだけのことさ』のところが好き。2015/11/25
紅香
41
恋の真っ只中『春の電車』が好きですが、一生忘れられない詩は『去りゆく人に』。南吉さんの醍醐味は彼の残した文章を間近で見られる機会があること。普段は川のせせらぎのような筆跡。子供の頃は懸命さ、こぎつねが書いたように微笑ましい。この詩の筆跡は違った。強い筆圧。全身で泣いていた。見れば分かる。原稿用紙が人知れずカサカサと騒がしい。思わずもらい泣き。ガラス越し、丁度この場所からの視線で書いたのだ。悲しみの重圧に耐えかねて。その想いはあの原稿用紙が破れることなく受け止めている。それからだ、彼のファンになったのは。2015/07/12
花々
10
童話は前から好きでしたが、詩を読むのは初めて。木や鳥はこんなことを考えて立っているのかな、鳴いているのかな、などと普段から何気なく観察していたんでしょうね。自然の移ろいや、小動物の気持ちが感じられるような優しい詩がたくさんで癒されました。数ページごとに描かれた挿絵も、とても合っていて雰囲気が出ています。2017/05/17
HaruNuevo
9
新美南吉と言えば「ごん狐」「手袋を買いに」等の童話という印象が強いが、これだけ多彩な詩を綴った人だとは不学のため知らなかった。 叙情的な言葉達の中に潜ませる鋭い洞察、技巧を感じさせないさりげなさ、論理性、五感の鋭敏さ、さらには五感を超えたところにあるもの、表情をくるくると変えてくる詩の数々は、時に癒しであり、時に指摘であり、時に希望であり、そして予言でもある。 楽しかった。2023/09/03
藍鼠
4
淋しくて静謐で、ひどくやさしい。このひとのえがく世界に、惹かれてやまない。2011/03/20
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