内容説明
北町奉行所・臨時廻り同心の鷲津軍兵衛と同期の加曾利孫四郎たちは、押し込み強盗の一味、赤頭三兄弟の隠れ家に踏み込んだ。だが、三兄弟の三男・吉三郎は一人逃げ延び、行方をくらませてしまう。岡っ引き・留松の子分、福治郎は、自分のせいで吉三郎を捕り逃したことを悔いて、肩を落としながらとある居酒屋へ立ち寄った。店の酌婦・お光と出会った福治郎は、少しずつ心を癒され、お互いの過去と素性を知らずして惹かれあっていくのだったが…。同心としての誇り、哀切、喜びが織りなす、捕物帖の傑作シリーズ、待望の第五弾。
著者等紹介
長谷川卓[ハセガワタク]
1949年、神奈川県小田原市生まれ。現在、静岡市在住。73年、早稲田大学大学院文学研究科〈演劇専攻〉修士課程修了。80年、「昼と夜」で群像新人文学賞を受賞。81年、「百舌が啼いてから」で芥川賞候補となる。2000年、『血路―南稜七ツ家秘録』で第2回角川春樹小説賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ベルるるる
11
竹之介が父・軍兵衛の言葉として「世の中に悪い奴はいない。弱い奴がいる。弱いから罪を犯す」と言うくだりや、「正義は己に恥じぬ振る舞いをする事」だと話す 場面には泣けた。捕物だけでなく、こういう子供の成長や、手下の福次郎の淡い恋や、奉行所での人間模様とかも読みごたえがある。三枝とのやり取りのように、時にはくすりと笑えたりするのも、このシリーズが好きな理由。2015/10/26
文句有蔵
11
よかった。本当によかった。喜怒哀楽の全てが詰まっている。切なくて泣いた。誰が悪かったのでもない。いや、お光の一瞬の心の迷いが悪かったのやもしれぬ。しかし誰がそれを責められようか。自分が属していた世界を捨てることは出来たとしても、裏切ることに逡巡はあって当たり前。ましてそれが闇の世界なら尚更。報復を恐れるのではない。世を拗ね、落ちるしかなかった者の集まりの中には、そうならざるを得なかった者同士の身内意識のような温かさ、杓子定規の理詰めの世間では吐けぬ、安堵の吐息のようなものがあったのだろうから。2015/04/25
長くつしたのピッピ
9
シリーズ5作目。話が一貫していて読みやすかった。下っ引きの福次郎と元女賊の光とのはかなく哀しい話を織り交ぜてのストーリー展開は、捕物一辺倒のこれまでと違った魅力があった。軍兵衛の人となりが光っていた。息子の竹之介もいい味を出している。ますます楽しみ。2015/07/23
ひかつば@呑ん読会堪能中
7
珍しくいきなりの大捕物で幕を開け、ちとドジを踏んで落ち込む手先の福次郎にスポットが当たる話。今回も火盗とタッグを組むが今回は中身が濃い。軍兵衛が嫌っている内与力三枝の意外な一面も見ることができ、切なくも充実した一冊だった。次も楽しみ!2013/03/09
kazukitti
4
抜けてた巻を補完。内与力の三枝と軍兵衛の倅の次巻以降にに繋がるエピソードがようやくわかった。そうか、どうもおかしいと思ったら元服で名前が変わってたのかw いつもながらの軽妙な会話や軍兵衛の一癖ある性格など楽しめた。特に三枝とサシで飲むシーンには吹き出してしまった。それとは逆に今回のタイトルの雨燕のお紋は切ない話だった。同じではないけど蕗のその後の境遇と比べると、一度悪に染まったとはいえ…あるいは悪に染まったが故なのかというオチの遣る瀬無さを、竹之介の元服の朝の爽やかさと、福次郎の笑いが救っていたと思う。2014/02/08
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