内容説明
昭和十六年十月、極秘のうちに誕生した、不沈戦艦「大和」の予行運転が初めて行われた。同十二月、太平洋戦争突入。そして戦況が悪化した昭和二十年四月六日、「大和」は三千三百三十三名の男たちを乗せ、沖縄への特攻に出撃した。日本国と運命を供にした「大和」の過酷な戦いと男たちの人生を、丹念に、生々しい迫力をもって描く、鎮魂の書。新田次郎文学賞受賞作。
目次
1章 神話
2章 待機
3章 海戦
4章 特攻
著者等紹介
辺見じゅん[ヘンミジュン]
富山県に生まれる。早稲田大学文学部卒業。編集者を経て現在、作家・歌人として活躍中。『男たちの大和』で第3回新田次郎文学賞、歌集『闇の祝祭』で第12回現代短歌女流賞、『収容所から来た遺書』で第11回講談社ノンフィクション賞・第21回大宅壮一ノンフィクション賞、『夢、未だ盡きず』で第9回ミズノスポーツライター賞をそれぞれ受賞
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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yoshida
141
戦艦大和のノンフィクション。大和の誕生からレイテ、沖縄特攻への出発まで。映画「男たちの大和」の原作。大和が沈む時は日本の最期の時。大和に乗艦し奇跡的に生存した人々の肉声が綴られる。戦後約50年後に書かれたこの作品では生存者の様々な肉声がある。やはり海軍の悪習は古参兵による新兵苛めと思う。映画での内田氏のことはフィクションと思っていたが、実在した人物と知り驚く。当たり前だが、大和の乗員それぞれに人生があり家族がある。彼等への海上特攻の命令は余りに悲しい。米国により開戦を余儀なくされた対米戦争の悲しみを見る。2018/04/08
のっち♬
118
戦艦大和の生涯を乗組員たちの人生を重ね合わせながら辿るノンフィクション。極秘の進水式にボヤ火災の竣工式と、誕生から既に行く末に翳りを予感させる。前半は"大和ホテル"と揶揄された生活模様の実態。西洋バスの長官浴室、冷蔵庫完備、天ぷら・カレー・すき焼きと常食も戦中と思えない豪華さ。会計検査のためなら小麦も海に廃棄。体罰はあれど碇泊先で大した問題が起こらないのも居心地が寄与していそう。同型艦武蔵の沈没、謎めいた栗田の反転、戦死者たち…レイテを皮切りに曝け出される戦争の恐怖と不条理で話は動揺と緊張に包まれてゆく。2022/01/03
サンダーバード@永遠の若者協会・怪鳥
86
一兵卒から将官まで、大和に搭乗したそれぞれの兵士たちの姿を描いたノンフィクション。ミッドウェー海戦からガダルカナル島、レイテ沖海戦へ。日本の戦局は益々悪化していく。そして最後の沖縄特攻。片道だけの燃料を積み出撃する大和の総員は3332名。そこには3332のそれぞれの人生があった。特攻前の最後に許可された上陸、生きて帰る事は出来ないだろうと思いながらもそれを家族には伝える事も出来ない悲しさ。下巻はその沖縄戦。 2019/08/10
佳乃
41
「大和」が最後の闘いに出るまでの上巻は、この艦と運命を共にする人たちがそれまでの時間をどう生きていたかが見える。本当にどこにでもいる十代だし、父であり、普通の息子であった。印象に残るのが内田が山本五十六の体をマッサージし、そして、短剣・茶掛を頂いていたこと。また山本五十六がどれだけの存在だったかも窺える。沖縄海上特攻作戦では3332名のはずがもう一人いた・・・となっていた謎も最後にわかる。下巻がきになるのででは・・・2015/05/04
黒瀬
39
『一億総特攻の魁となってもらいたい』 大鑑巨砲主義の時代に計画、建造されたにも拘らず、その使命を全うすることなく東シナ海に散った戦艦大和。海上特攻として出撃し、奇跡的に生還した乗組員の体験談に基づいた本著は、時間の制約があった映画と比べると乗組員一人ひとりに充てているスポットが多い。そのせいか時系列が戻ったり進んだり、若干冗長に感じる部分もあるかもしれない。しかし、ノンフィクションとはこういうものだ。2018/07/31
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