内容説明
捕物帖もあれば、敵討ちの話もある。毒婦もいれば、はかない運命にもてあそばれる女もいる。さまざまな事件や日常を通じて、そこには細やかな心の動きが余すところなく描かれている―沢田ふじ子「蓮台の月」、杉本章子「夕化粧」、諸田玲子「千客万来」、松井今朝子「阿吽」、宇江佐真理「ただ遠い空」、戸川昌子「夜嵐お絹の毒」、栗本薫「お小夜しぐれ」、北原亜以子「証」の全八篇を収録した傑作女流時代小説アンソロジー第二弾。
著者等紹介
結城信孝[ユウキノブタカ]
東京都生まれ。立教大学経済学部卒業。ベースボールマガジン社、内外タイムス社の記者を経て、90年以降フリー。各紙誌上にて評論活動を続ける
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感想・レビュー
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あつひめ
18
時代小説初挑戦。なかなか陰気くさいような(ファンの方ごめんなさい)印象が拭えなかった。いつも祖父が読んでいたからかもしれない。でも、私の中にずーっと陰気くさい印象しか残していなかった時代小説を覆してくれて読書の幅がこれで一気に読書の幅が広がりそうな予感がする。言葉遣いや出てくる風景は男性が書くものと同じようなんだけどどこか女の気配りというんだろうか女の気配を窺わせるアンソロジー。杉本さんの「夕化粧」が印象的。どの作品も映像化したらまた一段と楽しめそうな気配。これからは、時代小説にもどんどん手を伸ばしたい。2011/05/21
星落秋風五丈原
10
結城 信孝編。捕物帖もあれば、敵討ちの話もある。毒婦もいれば、はかない運命にもてあそばれる女もいる。さまざまな事件や日常を通じて、そこには細やかな心の動きが余すところなく描かれている。2003/06/23
山内正
4
言い返す知恵廻らんかと並木五瓶が 今年六十手前深い皺下膨れ 神社の狛犬の口へ子供が何か入れ 内儀風の女が口から取る 紙に目を走らせ紅の口が半開きに 相手は身近な男かと 数日し狛犬の続きがと 男が現れ文 を写したと 金を約束の通り欲しい 文面の上だけ読んでみろと五瓶が 気付く どくやく 夫を殺す文や 新しい狂言を五瓶が出した 当たった 密書を出し一言毒薬!で幕 悪い事する人間が悪党面とは限らん 普通の女が我が子に欲心で起こした 事や誰にも有る話や 2021/01/14
山内正
3
半纏の襟を掻き合せ話出す 太夫おさとってのは十八後から首を閉められ松の木に吊るし髪を切り落とし丸坊主にと下っ引きの弥七が 知恵を貸してくれと夢之丞に 次いで大川でお直っておさとと同い年のが吊るされ太夫の手拭いが落ちてたんで お直ってのは友達虐めで 私の手習いの先生と約束してたのを 横取りしてとお蝶って女も来た 三人共顔見知りらしく お直が原因らしくと話をする 二日後そのお蝶が橋桁に吊るされた 幾日もしない日に先生は祝言を挙げるからと見晴らせた 顔を隠したのが花嫁に襲い掛かる 縮れた髪に反っ歯のお小夜が 2021/09/16
山内正
3
三百坪の薬庭に禁令を破り植えている角太郎 薬問屋は妹夫婦が 丹念に描き分類し新種を研究するのが好き 見慣れない草が奥にあった 隣家からの 毒薬と図鑑で知る 日本に無い物、麝香水母 お絹と名の旗本の妾だと 薬草の話をし私の腹に煎じたものを 貼ってと 熱さで騒いでもと やがて身体をくねらせ喘いだ 翌日老婆が大変ですと呼びに来た 旗本が昨夜に毒薬で死んだと 奉行は旗本と縁者に山形の大名で 捕らえられ無い 夫婦で一月暮せと お家騒動の果の事だと お絹は捕らえられ毒婦として裁かれた2020/10/23