出版社内容情報
大滝信吾は、さる身の上を秘して、浅草寺の一角で寺子屋を開いている。
源吉や三太、おさよなど多くは町人の子だ。
そんな穏やかな春の日、子どもたちと縁側で握り飯をほおばっていたとき、源吉の姉が助けを求めて駆け込んできた――大切な人々を守るため、信吾は江戸の闇と真っ向から闘うことに。
浅草の四季を舞台に、家族や友人、下町の人情に支えられながら、果たして信吾は天命を見つけられるのか。
内容説明
大滝信吾は、さる身の上を秘して、浅草寺の一角で寺子屋を開いている。源吉や三太、おさよなど多くは町人の子だ。そんな穏やかな春の日、子どもたちと縁側で握り飯をほおばっていたとき、源吉の姉が助けを求めて駆け込んできた―大切な人々を守るため、信吾は江戸の闇と真っ向から闘うことに。浅草の四季を舞台に、家族や友人、下町の人情に支えられながら、果たして信吾は天命を見つけられるのか。
著者等紹介
砂原浩太朗[スナハラコウタロウ]
1969年生まれ。2016年、「いのちがけ」で、決戦!小説大賞を受賞してデビュー。21年、『高瀬庄左衛門御留書』が山本周五郎賞と直木賞の候補となったほか、野村胡堂文学賞、舟橋聖一文学賞、本屋が選ぶ時代小説大賞を受賞、22年には『黛家の兄弟』で山本周五郎賞を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
182
世の鬱屈や人の心の闇を主題にダークな時代物を書いてきた著者が、初めて救いのある人情小説に挑んだ。武士の庶子として浅草で寺子屋を営む信吾が、教え子やその家族の困り事を助けるうちに少しずつ江戸の裏社会を触れていく。町の祭事や四季折々の描写は美しいが、悪い意味で自由放任の社会からふと芽を出す黒い影との対照が味わい深い。理不尽に追い詰められたラストで、思いがけぬ真実が明かされる展開は映画的だが爽やかな読後感だ。過去作品のような重い感動はないが、市井の片隅で懸命に生きる人間ドラマは寅さんの映画に通じるものを感じる。2024/11/04
いつでも母さん
154
砂原さんが浅草の寺子屋を舞台に、身分を隠した(隠し切れないが)信吾が下町の人々との関わりの日々を描く連作6話。好むと好まざるにかかわらず、色々ある暮らしにちょいとやくざが絡んで、あっという間に最終話『錦木』に畳み掛ける展開が見事ではあった。が、ちょいと都合よくまとまり過ぎの感もある。「だから近づかない」の言葉が好い。江戸払い3年は長いようで短い。何もないはずは無い!そして、帰って来てからの信吾や皆を見てみたい。2024/10/21
hiace9000
149
浅草寺境内で寺子屋を開く大滝信吾。武士とも町人ともつかぬ中途半端な生まれは秘すれど、屈託なく実直な人柄は子供・町人からも慕われる。人それぞれの事情に立ち入り過ぎずさりとて看過せず、武や知に抜きん出た才覚はないが、ほんの少しの勇気で"周りの人間"を動かしていく…。そんな等身大の主人公像は新鮮にして魅力的。互いの「察しの妙」を味わうもまた、時代小説の面白味か。神山藩シリーズ等、武家社会を凛たる静謐さと抒情感で描くとは別筆の町場人情物。季節の移ろいや心象を花鳥風月の風情でふわり描く砂原筆は、今作でも実に秀逸。2024/12/20
タイ子
129
砂原さんと言えば藩中の武士を中心に描く作品が多かったのだが、本作は藩を飛び出して、江戸の市井で一所懸命に生きる人たちの姿を描いたもの。中心になるのが、浅草浅草寺の中で寺子屋を開いている大滝信吾という男。彼には一部の人しか知らない身上があり、寺子屋に通う子供たちにとっては心優しき師匠。子供たちの父親が職で問題が起こるとほおっておけず、そこがヤクザ絡みの場所であろうと出向いて行く。6つの連作短編集が季節の移ろいと共に描かれ、最終章で信吾に突き付けられる人生の厳しい岐路。あー、切ない。だけどまた信吾に会いたい。2024/10/19
タツ フカガワ
98
大滝信吾は旗本の次男。とはいえ妾腹の子ゆえ町家での暮らしに安らぎを求めて浅草寺の寺内で寺子屋の師匠になった。その信吾と子どもたちや親たちとの繋がりを6編の連作で描く人情噺。のようではあるけれど、端正な語り口と町家の物語がどうも折り合いがつかないように思いました。とくに最終章の決着はいかがなものか。カタルシスはどこに?2024/11/10