出版社内容情報
森谷 明子[モリヤ アキコ]
著・文・その他
内容説明
安倍益材の息子、葛丸(後の晴明)は、幼き頃から人の死を先見してしまう力を持つと噂されていた。災いが降りかからぬように、屋敷から出ずに育てられてきた葛丸。彼が七歳になった時、友人となったのが、陰陽師への修業を目前に控える少年・津久毛と、先帝の孫である鶴君だった。ともに人に馴染めぬがゆえに親しくなる三人。しかし葛丸の先見のせいで、宮中での毒殺の疑いが益材にかかる。その事件をきっかけに、葛丸は平安の都に潜む数々の謎へと挑み始める―。
著者等紹介
森谷明子[モリヤアキコ]
1961年神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。2003年『千年の黙 異本源氏物語』で第13回鮎川哲也賞を受賞してデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ちょろこ
127
最終章が良い一冊。安倍晴明の少年期を描いた平安時代連作ミステリ。この時代のミステリは好き。しかも安倍晴明にスポットをあてられると否応なしに惹かれる。彼の"先見"のチカラはどこか幻想的。そしてちょっと異質に見られがちな陰陽師の息子、津久毛と天皇の孫という立場の鶴丸との、友としての時を過ごすさまが微笑ましかった。ちょっとした不可解な出来事をそれぞれの持ち前の特異体質を活かして"三人寄れば文殊の知恵"的な解決も楽しめた。そして何より最終章の描き方が良い。こうまとめてくるとは。ストンと腑に落ちる清々しい読後感。2022/11/05
みかん🍊
91
葛丸は人の死を予見すると噂され屋敷から出ずに幼少期を過ごしたが、7歳になった時、陰陽寮の津久毛や先帝の孫である鶴君と知り合い、匂いを色で視る事の出来る葛丸、音を色で視る鶴君、そして賢い津久毛の三人の少年が都で起きる難事件を解決していく平安歴史ミステリーである、平安時代に疎いので身分や時の背景が分からないのでそこは苦戦したが、左大臣の息子や内親王、醍醐天皇の妻などの身分の高い人々を後ろ盾に後の歴史人物達の活躍劇がなかなか楽しくミステリーとして楽しめた。2022/09/27
真理そら
72
かわいらしい晴明、博雅、保憲に会えてうれしい読書だった。若くてやんちゃな藤原師輔にも会える。北の天満宮と関係の深い「あやこ」も登場する。夢枕晴明に馴染んだ後では態度のデカイ博雅に驚くが、実際の身分を考えれば夢枕博雅が可愛すぎるのかも。小次郎は親の名前からうっすらと誰なのかを想像しながら読み進んだけれど晴明との関係が意表をついておもしろい。時代の流れや登場人物は史実通りなので続編が読みたい、この作者なら紫式部やらも登場しておもしろい物語になりそうな気がする。2022/12/01
さつき
70
タイトルに晴明とあるけれど、この作品に登場する安倍晴明はまだ少年で葛丸と呼ばれている。彼が友人の津久毛、鶴君と共にさまざまな事件に巻き込まれるストーリー。なりゆきで出会った藤原師輔と彼の従者小次郎や、康子内親王、糺御息所など個性的な登場人物がたくさんで、えっ?この人も出てくるの?の連続。目が離せませんでした。最後の最後にかなりのドッキリがあります。2022/09/23
アルピニア
60
舞台は安倍清明、源博雅、賀茂保憲がまだ元服前の少年だった頃。清明(葛丸)は香りが見える目を持ち、博雅(鶴君)は音が見える目を、保憲(津久毛)は、嘘がわかる能力を持つ者として描かれている。藤原師輔(後の右大臣)や康子内親王、糺御息所(博雅の祖母)を巻き込んで都の怪事を解き明かす様子は鮮やかというより己の能力をまだ把握、発揮しきれていない初々しさを感じる。最後にあの場面でつなげるとは・・唸りました。森谷さん、続編はあるのでしょうか?楽しみに待ちます。2022/10/05