内容説明
世界各国から百名以上の研究者や大学院生が集まり、宇宙の始まりや仕組みなどの疑問に答えるべく日夜研究に取り組んでいる天文数物研究機構。ある日、若手研究者たちが主宰するセミナーに謎の青年が現れ、ホワイトボード23枚に及ぶ数式を書き残して姿を消した。見たこともないその数式には、人類の宇宙観を一変させかねない秘密が隠されていた。つまりその数式は、この宇宙、そして世界の設計図を描いた“何ものか”が存在する可能性を示唆していたのだ。悪戯のように思えるこの不可思議な出来事は、日本だけでなく世界中23もの研究機関で発生していた。にわかに“神の存在”に沸き立つ世界。ほどなく人類は、“神の存在”にアクセスしようと試みる。そして、その日から現実は大きく変わることになる―。
著者等紹介
山田宗樹[ヤマダムネキ]
1965年愛知県生まれ。筑波大学大学院農学研究科修士課程修了後、製薬会社で農薬の研究開発に従事した後、『直線の死角』で第18回横溝正史ミステリ大賞を受賞し作家デビュー。2013年『百年法』で第66回日本推理作家協会賞(長編および連作短編集部門)を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しんたろー
184
最近はすっかりSFが板についた感のある山田さんの新作は適度なページ数で濃密な作品に仕上がっていた。数学や物理の話はガチガチ文系人間の私には判ったような判らなかったような曖昧な読解だったが「この世界は、そういうものかも知れない」と思わされてしまうストーリー展開が新鮮で楽しかった。そして、SFは突き詰めると哲学にも通ずるものだと感じた。傑作『百年法』ほどの重厚な人間ドラマは描かれていなかったが、今を生きる事の意味を考えつつ、空想の世界へ想いを馳せる時間を持てて「良い読書だった」と素直に言える。次作も楽しみ🎵2021/10/14
とん大西
139
予想外にサクサク読めて面白い…が、このテーマならもっと風呂敷を広げた方が骨太感が出たかも。物理学にせよ数学にせよ、突き詰めればその延長線上に存在するのは〈神〉ということになるのでしょうか。それとも人智を超えた存在としてとらえるものでしょうか。突然、人類に突きつけられたメッセージ。クラウス実験を契機に露となってしまった〈宇宙〉、ひいては人類そのものの存在意義。そのあたりは王道のSFである。と、同時に哲学の群像劇ともいえるか。宇宙の謎に挑む-読み終えたらタイトルと表紙のイラストに『なるほどね』としっくり。2021/09/07
うののささら
97
宇宙を設計した何者かが人類に交信をしてきた。10次元の世界がどんな物理法則で成り立っているか、彼らが伝えてきた内容を正確に理解できてるか誰もわからない。物理学者は数学的に解析できなければ物理現象を理解したといえない。数式が新たな数式を導き思いもよらない秘密を暴く。底知れぬ数理の流れ数学の概念を超えたものをフレームワークに押し込め謎にせまる。難しくてよくわからないな。科学的に説明する理論がないのは神の領域なのかな。また我思うゆえにわれあり的なすべては夢かも知れない哲学的な話になっていき面白かったです。2021/09/30
とろとろ
88
この作家の宇宙観は、知的生命体は宇宙で地球人だけという理論。以前に自分がよく読んだ「光瀬龍」的な雰囲気がプンプンして面白い。今回は10次元空間を支配する何らかの存在がいて、我々低次元(立体+時間の4次元)の存在を操っているのだというのだ。そういう発想は、最後に人間がデータカード1枚に記憶される情報だけの存在になるのと同じ。神の存在が現実となれば、どうしようもない無気力感だけになって、やがては消滅するではないかと予感しているように思える。確かに、今もって地球外文明に会えていないのが最も確たる証拠ではないか。2021/11/30
ベイマックス
81
読み始めたら頑張って読み進めてほしい作品でした。物理学やら数学やらの文言が出て来て、難解?って感じるけど読み進めると物語が動き出します。そして、そんなありきたりなオチかよって思うけど、読み進むとさらなる展開が待っています。SF風味に苦手意識がある方もいるかもですが、読み切ると面白いですよ。2024/03/05