内容説明
「読書はどんなに孤独な行為に見えたとしても、人や世界とつながることです」神楽坂に盲導犬と住むよう子は、出版社の担当・希子と隔週の木曜日に、打ち合わせを兼ねたランチをするのが楽しみだ。一方、神楽坂で“古書Slope”を切り盛りするバツイチの本間は、五歳になる息子のふうちゃんと、週に一度会えるのが木曜日だ。書物への深い愛、物語への強い信頼、それを分かち合える大切な人。本に込められた“想い”を伝えていく―。
著者等紹介
平岡陽明[ヒラオカヨウメイ]
1977年生まれ。慶応義塾大学文学部卒業。出版社勤務を経て、2013年「松田さんの181日」で第93回オール讀物新人賞を受賞。20年『ロス男』が吉川英治文学新人賞の候補になる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しんごろ
357
木曜日には何かが起こる特別な日。そう、それは木曜日にはココアを飲みたくなるように…。視覚障碍者の書評家と古書店店主の奇跡の物語。途中で話が見えてしまったけど、本を通しての縁と出会い、本の話で盛り上がれるのは、やっぱり素敵で幸せなことだと思う。よう子と本間、ボタンを掛け違えただけ。いつか二人が結婚しなくてもいいから、ひとつつ屋根の下で暮らしてほしいと願う。改めて、本が好きで良かったと思える心温まる物語を書いてくれた平岡陽明さんにありがとうと感謝したい。2020/11/20
おしゃべりメガネ
252
何の邪なキモチもなく、スラスラとイッキに読めて、読後感はとにかく清涼感にあふれるステキな作品でした。今作は'エンパス'について触れられており、一言で言えば'共感力の高い人'のコトを言うらしいです。主人公「よう子」は盲目の書評家で盲導犬とともに神楽坂に住んでいます。一方で古書店を営む「本間」はバツイチで週に一回、別れた五歳の息子と会える日を楽しみにして過ごしています。何ら接点のないと思われる二人が、思わぬコトからそれぞれの人生を振り返るコトに。とにかく文章から温もりがじんわり、ゆっくりと伝わる作品でした。2020/12/12
sayuri
224
なんて素敵な物語。本を読みながら、今、本を読んでいられる事の昂揚感とトキメキと幸せを感じた。タイトルの「ぼくもだよ」の意味がわかった瞬間の胸の高鳴り。たった五文字の「ぼくもだよ」に感動する。神楽坂で盲導犬のアンと暮らす盲目の書評家・竹宮よう子。この作品の中でよう子が綴る自身の半生に惹きつけられる。視覚障害者ゆえの孤独や理不尽、母との確執、友人の悪意。苦しみも悲しみも経験したよう子が、本を愛する人達の優しさで癒され、途切れていた縁が再び繋がり出す後半の展開には胸が躍る。22年の時を経た奇跡のラブストーリー。2020/11/26
mint☆
194
盲目の女性と古本屋の店主。装丁からこの2人が主人公のベタな恋愛小説かな?と想像し、最初はなかなか手が出なかった。高評価の本がそんな単純ではないはず。読み進めても2人の接点が神楽坂以外に見えてこない。『ぼくもだよ』が出てくるときゅん!こういうシチュエーションだったかぁ。人と人との出会いって本当に面白い。本が繋ぐ過去と現在。そして未来へ。文中に出てくる韓国薬膳料理に興味津々。実際にあるお店なんですね。落ち着いたら行ってみたいな。2021/02/02
みっちゃん
188
盲導犬、と思しき犬のハーネスを握る女性。彼女が通りすぎる、人気のない書店?の奥の男性。これは二人の恋物語なのか、と察しをつけるが、二人の視点は、人生はなかなか交わらない。もどかしく感じていたら、突然に!何と。そうだったのか。ほんのちょっとの偶然が、すれ違いが、人と人の人生を深く結びつけたり、遠ざけてしまったり。切ないな。でもその切なさや悲しみを良い思い出として力に変えて、毎日を丁寧に過ごしていたら、その先には穏やかな幸せや喜びが待っていてくれるのかも。そう思わせてくれる優しい物語だった。2021/02/01