内容説明
オリンピックまであと2年、昭和37年の東京。17歳の郷子は、集団就職で2年前に上京したものの、劣悪な労働環境から工場を逃亡した。そのまま上野駅でうろうろしていたところを、浅草にある「洋食バー高野」のおかみ・淑子に拾われ、そこで働くことに。工場での食事のトラウマからずっと食べられなかったカレー、初体験!揚げたて熱々カツサンド、心に沁みわたる感動のプリン…。美味しくて温もりあふれる絶品料理と人びとに出会い、郷子は新しい“家族”と“居場所”を見つけていく。17歳の少女の上京物語。
著者等紹介
麻宮ゆり子[マミヤユリコ]
1976年埼玉県生まれ。2003年、小林ゆり名義にて第19回太宰治賞受賞。2013年「敬語で旅する四人の男」で第7回小説宝石新人賞を受賞しデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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シナモン
141
集団就職で上京した17歳の郷子。劣悪な労働環境の職場を逃げ出し、ひょんなことから浅草の「洋食バー高野」で働くことに…。慣れない洋食屋で奮闘する郷子。初めのうちはなんとなくそのキャラクターに馴染めなかったけど、明るさと力強さに若いっていいなぁと、だんだん応援したい気持ちになりました。活気に満ちた高度経済成長の時代の下町の雰囲気と美味しい食べ物も魅力的です。この時代の人はみな逞しいなぁ。私も頑張ろう。2021/10/25
みかん🍊
106
昭和37年東京、集団就職先の劣悪な労働条件の工場から逃げ出した郷子は浅草の洋食バーの女主人に助けられる、捨て猫の様にするりと入り込んで働くことになった郷子は友人や先輩たちに出会い自分の居場所を見出していく、たった15歳で大人の世界に出され親や工場にお金や時間を搾取されてきた事に気づいて自分で考えで動く卿子はとても強い。初めて食べたプリンアラモードは美味しかっただろう、文化ブランが出てくるからモデルは神谷バーなのかな、活気あるお店だったのね。2020/08/24
ゆのん
93
舞台は東京オリンピックの2年前、浅草。戦後15歳で集団就職の為に上京したもののあまりに劣悪な環境に逃げ出す17歳の少女が主人公。知り合いが1人も居ない東京で『バー高野』の女主人に拾われウェイトレスとしての生活が始まる。親にも捨てられ、借金や追手に怯え、不信感や疎外感も感じている様は捨て猫のよう。素直で明るい性格は物語を暗くする事なく楽しく読める。1812020/07/30
はる
77
高度成長期の浅草。集団就職で上京してきた17歳の少女郷子は、悪辣な勤め先から逃げ出したところを洋食バーの女主人に助けられ、この店で働くことに…。周りの人たちが魅力的。なので、もっとわくわくするような展開を期待したけれど…少し不完全燃焼な感じ。主人公が料理人ではないからかな…。登場人物の言葉使いや価値観が今風で、当時の空気感が感じられない。一つ一つのエピソードは良かったけれど。2020/08/22
ぶんこ
73
昭和37年の浅草が舞台。支度金欲しさの親に集団就職で川崎の工場へ働きに出された郷子は、過酷な職場から逃走し、高野バー店主とし子に助けられる。それが縁で高野バーで働き始めてからの郷子の前向きな働き方と、いつまでもメソメソしていない明るさが好ましい。常連客の盲目の少女小巻さんとの友情も構えたところがなくて好ましい。良い人たちに囲まれて、本当によかった。それにしても昭和37年になっても、戦後をひきづっているところが残っていたのに驚く。2021/02/01