内容説明
「決して後ろに退かぬ」と言われる毛虫を兜の前立にして、伊達家中一の勇猛さを誇り、伊達三傑の一人とも数えられた男・伊達成実。だが文禄の役から帰参した後、生涯をともにすると約した政宗のもとを離れ、成実は謎の出奔をする。その秘められた意図とは?戦国末期を政宗とともに駆け抜けぬけた男の生き様を描く歴史長編。
著者等紹介
吉川永青[ヨシカワナガハル]
1968年東京都出身。横浜国立大学経営学部卒業。2010年に『戯史三國志 我が糸は誰を操る』で第5回小説現代長編新人賞奨励賞を受賞してデビュー。2012年『戯史三國志 我が土は何を育む』第33回吉川英治文学新人賞候補。2015年『誉れの赤』で再び第36回吉川英治文学新人賞候補となる。2016年『闘鬼 斎藤一』では第4回野村胡堂文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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巨峰
91
伊達成実といえばどうしても大河ドラマ「独眼竜政宗」で成実を演じた三浦友和を思い浮かべてしまう。同じように鬼庭左月はいかりや長介、伊達輝宗は北大路欣也。子供のころの刷り込みは怖い(実は政宗はそんなに渡辺謙を思い浮かべない)本作はあまり伊達政宗を良く描かれていない。子供のころの疱瘡の傷、失明、母に命を奪われかけたことが傷となって性格におおきな歪みを抱えている。そのため伊達3傑のうちの2人(成実と茂庭綱元)に途中で逃げられる。それでも見捨てきれない可愛さがあるから成実は戻ってくる。2018/12/01
ポチ
71
幼少の頃より伊達政宗の右目になり、政宗を支えながら伊達家を大きく強くしようとする伊達成実だが、片倉小十郎の器量の大きさに自分の存在意義を疑い悩む様が良く表されている。同じ痛みを持つ貴方を政宗さんは好きだし、頼りにしていますね。無事に帰参出来た時は私も嬉しかったです。良かったですね。2018/01/17
ren5000
39
政宗の右腕は片倉小十郎っていう認識がありましたが、右目っていう題名が秀逸でそれが伊達成実ということが納得してしまうお話でした。あまり成実について読んだことがなかったので興味深く面白かった。しかし大河ドラマの影響がもろに出て、成実は三浦友和さんで小十郎は西郷輝彦さんで当て読みしてしまいました(笑)2018/03/25
如水
31
伊達成実、伊達三傑の一人にして伊達政宗の従兄弟。通称『毛虫様』ですね。龍の右目と言えば片倉景綱では?と御思いかも知れませんが、ちゃんと話の中に出て来ます。いや〜面白かった。後世に『武神』に祭り上げられる程戦上手だった事は知ってましたが、外交手腕も中々。苦悩の上の出奔やその後の悲劇、後々の復帰劇等も劇的に描かれてます。伊達ファンの方は必見です。さて、毎度の史実を改編し話を盛り上げる手法は・・・有りましたね、なるほど、ナルホド(笑)。まっエエんでないかい⁈面白いから^_−☆2017/12/06
maito/まいと
25
惜しい、本当に惜しい1冊。片倉小十郎に隠れてあまり注目されていない伊達成実を描いた本書は、主君・伊達政宗との強い信頼関係の中で、武だけでなく知も一流の成実が伊達家の逆境を切り開く力強さ、時代の変化で取り残されていく武将の戸惑い、すれ違いや悲劇、喪失、そしてそこからの、血潮沸き立つ合戦絵巻など読み応え抜群の要素ばかりなのだが・・・物語の配分を間違えたかのように、終盤は尻切れ蜻蛉で拍子抜けするラスト。途中も墜ちていく展開が長すぎ。小十郎が成実を諭す場面も、もっとはやくできただろうに。やはり残念な作品だなあ。2018/08/14