内容説明
信義は極寒の地に消え、絶望は刃となり故国を討つ。李陵と蘇武、宿命の再会へ。壮大なスケールで描く、北方「史記」佳境の第六巻。
著者等紹介
北方謙三[キタカタケンゾウ]
1947年佐賀県唐津市生まれ。中央大学法学部法律学科卒。81年『弔鐘はるかなり』でデビュー。83年『眠りなき夜』で第4回吉川英治文学新人賞、85年『渇きの街』で第38回日本推理作家協会賞長篇賞、91年『破軍の星』で第4回柴田錬三郎賞をそれぞれ受賞。近年は時代・歴史小説にも力を注ぎ、2004年『楊家将』で第38回吉川英治文学賞を、06年『水滸伝』で第9回司馬遼太郎賞を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Y2K☮
37
蘇武のニヒリズムは、ある意味で武帝が持つエゴイズムの相似形かもしれない。どちらも己の才覚に酔い、なおかつ否定したがっている何かにずっと囚われている。国が必要ないなんて思わないけど、国のために生きているわけじゃない。己のためが誰かのために繋がり、それが微力ながら国のためにもなる。その程度の意識こそ実は最適解ではと感じている。成功するしないは運と割り切り、ただ己のできることを自分と自分以外の誰かのために時々休みながら精一杯やる。そんな風に肩の力が抜けた領域へ至ったのが頭屠や司馬遷。李陵は秒読み段階。最終巻へ。2025/05/02
kawa
31
在位50年超えの武帝。死を意識せざるを得ない年齢を迎えるなか匈奴との争いは停滞。極北で狼を友にサバイバルの蘇武はその生活に張り合いが…そして、友・李陵との思わぬ再開、その李陵は元・部下の孫広からの思わぬ奇襲で負傷、司馬遷は史記の執筆に没頭。4者4様の生き方読み応えありのなかラストの次巻で大団円なるか。2024/05/19
巨峰
19
老いる劉徹。皇帝というたった独りの人間にここまで迫った小説もないのでは。そして蘇武がいきる最果ての北の大地の描写が瑞々しく印象に残ります2013/05/31
taka61
16
【図書館本】史記武帝紀も第六巻となりました。李陵は自らを漢人でも匈奴でもない戦人と称し、新たな人生を生きています。苦しみのどん底を経験したからこその境地なのでしょう。李陵の首だけを狙うかつての部下孫広との戦いに、お互い何を思うのでしょうか。衛青亡き後、どうしても漢軍よりも匈奴軍に肩入れしてしまいます。そして劉徹。老いて愚帝に成り下がったとは言え、さすがにきらりとしたものが見え隠れするのは流石ですね。物語は残すとことあと一巻。どんな最後を見せてくれるのでしょうか。とても楽しみです♪2013/06/15
じお
8
★★★★☆ 再読。北方歴史小説シリーズ第6巻。死の恐怖に怯え衰えを見せる劉徹、一方で匈奴となった李陵は友と再会するの巻。李陵と蘇武、帝によって運命を狂わされた二人がここで再開するのもまた運命の悪戯だなーと。物語は帝の衰えと共に暗い影が差す漢王朝に対して、陽の気に満ちた匈奴側の輝きが気持ちよく興味深い。蘇武のサバイバル生活の充実具合はますます加速し、単純に楽しい。次巻最終巻楽しみにしたいです2019/03/30