内容説明
語学者による異色の百人一首本。百人一首歌について、古注の諸説を整理した上で、語学の立場から改めて読み解く。その過程で、著しい進展を見せている古典文法研究の最新の知見を、易しい語り口で縦横に解説した。
目次
秋の田の仮庵の庵の苫をあらみ、我が衣手は露に濡れつつ。(天智天皇)
春過ぎて、夏来にけらし。白妙の衣干すてふ天の香具山。(持統天皇)
あしひきの山鳥の尾のしだり尾の長々し夜をひとりかも寝む。(柿本人麿)
田子の浦にうち出でて、見れば、白妙の富士の高嶺に雪は降りつつ。(山辺赤人)
奥山に黄葉踏み分け鳴く鹿の声聞く時ぞ、秋はかなしき。(猿丸大夫)
鵲の渡せる橋に置く霜の白きを見れば、夜ぞ更けにける。(中納言家持)
天の原ふりさけ見れば、春日なる三笠の山に出でし月かも。(安倍仲麿)
我が庵は都の辰巳、しかぞ住む。世を宇治山と人は言ふなり。(喜撰法師)
花の色は移りにけりな、いたづらに。我が身世にふるながめせし間に。(小野小町)
これや、この、行くも帰るも別れては、知るも知らぬも逢坂の関。(蝉丸)〔ほか〕
著者等紹介
小田勝[オダマサル]
1964年東京都生まれ。國學院大學大学院文学研究科博士課程後期単位取得。博士(文学)。國學院大學文学部教授。日本語学専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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山猫
14
世の「ちはやふる」かぶれどもよ、これでもくらえッ!2022/01/08
chisarunn
5
すごく面白かった。面白かったが、自分は文法については何もわかっちゃいないということもよくわかった。英語などでもそうだが、多読してなんとなく意味がわかるようになると文法もそれなりにわかったような気になるが、古典文法についてはそれは間違い。やっぱり系統的に学ばなければ理解に至ったことにはならないのだ。それと、○川ソフィア文庫は頭から信用してはいかん、ということがわかった。ナムナム。2022/12/28
me23
1
圧倒的情報量、圧巻。ほんとにハズレがないな… 解釈の筋道の頑丈さがすごい。〈再読したくなる本〉と出会うことがここ数年のテーマだが、ここ最近大当たり連発。さて、こういうゴリゴリ実証的に攻める解釈を読んだら自分は実証主義まっしぐらになっちゃうたちなので、次はゆるやかな本を読む。実証と空想との程よいブレンドで味付けを楽しむセンスがほしい!2022/04/30