内容説明
標準語においては、年齢や地位の上位者に対しては二人称代名詞で言及することができないが、下位者に対しては言及することができる。この体系を「上下対称詞」と呼び、王朝文学、軍記物語、『捷解新語』等の外国語資料、散切物、小説、雑誌、国定国語教科書、新聞記事等、それぞれの時代の言語資料を調査。また、各地の方言の考察も行った結果、公家や武家の公的言語として継承されてきた上下対称詞の体系が、明治期からの学校教育等を通じて標準語として全国に確立されたという結論に達した。さらに海外周辺国の対称詞についても言及し、系統論的な問題も提起する。対称詞を歴史社会言語学的観点から分析する。
目次
対称詞体系の歴史的研究
王朝文学の対称詞
軍記物語の対称詞
『捷解新語』の対称詞
近世武家の対称詞
明治前期東京語の対称詞―残切物を通じて
『にごりえ』『たけくらべ』に見る対人待遇表現
明治後期・大正期東京語の対称詞
総合雑誌『太陽』に見る対称詞
固定国語教科書の対称詞
昭和前期の対照詞
昭和後期における二人称代名詞「あなた」の待遇価
平成の対称詞
方言の対称詞
世界の言語の中で見た日本語の対称詞
著者等紹介
永田高志[ナガタタカシ]
1949年神戸市生まれ。1972年甲南大学卒業。1973~1976年インド国立タゴール国際大学留学。1981~1983年アメリカジョージタウン大学言語学部博士課程留学。1987年上智大学外国語学部言語学専攻後期課程満期退学。1989~1990年ブラジルロンドリーナ州立大学客員研究員。2003~2004年オーストラリア国立大学(ANU)モナシュ大学客員研究員。現在、近畿大学文芸学部教授。2005年上智大学博士(言語学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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