出版社内容情報
★第63回毎日出版文化賞受賞。
脳科学の行く手には、大きな壁がある。技術の壁、スケールの壁、こころの壁、社会の壁である。たちはだかる大きな壁に対して、脳科学者はどのように問題を解決しようとしているのか。自由意志や社会的適応、ココロの理論、あるいは脳科学の実験環境や、話題のブレイン‐マシン・インターフェイスなども押さえながら、「脳と社会」の関係性から脳の解明を目指す。
内容説明
脳科学はヒトを幸せにできるか。「脳と社会」の関係性から、脳の解明を目指す。
目次
序章 脳と社会と私たち
第1章 脳科学の四つの壁
第2章 二頭のサルで壁に挑む
第3章 壁はきっと壊せる―適応知性の解明に向けて
第4章 仮想空間とヒト
第5章 ブレイン‐マシン・インターフェイス
第6章 つながる脳
著者等紹介
藤井直敬[フジイナオタカ]
1965年広島生まれ。東北大学医学部卒業。同大医学部眼科学教室にて初期研修後、同大大学院に入学、1997年、博士号取得。1998年よりマサチューセッツ工科大学にて上級研究員として勤務。2004年帰国。現在は、理化学研究所脳科学総合研究センターにて適応知性研究チーム・チームリーダー、BTCC双方向性BMI連携ユニット・ユニットリーダーを務める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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アイA♡
11
思っていた内容とは違った。猿を使った空間認識の実験はおもしろかった。何かの結果が出ている訳ではなく、研究の途中経過?という感じ。2015/03/11
makio37
5
目的が何であれサルの脳に電極を突きさしたりする行為には嫌悪感を抱いてしまう。とは言え、研究に対する著者の熱意は伝わり、参考になる内容も多い。まず、「我慢するサル」というヒトの捉え方と関連する実験の内容が面白い。選択的な抑制コントロールを求められる中位のサルほど目つきが鋭くなるという。電車の椅子の座り方に見られる脳の社会性の例や、人前でアガる現象の説明も興味深い。身近なヒトから「リスペクトを回す」という提案も取り入れたい。我々の脳は関係性維持のために2割のリソースは使えるそうだから。2016/12/11
カネコ
5
◎ 著者は「社会的脳機能の解明」という研究テーマに取り組む脳科学者。従来の「つながっていない脳」を対象とした実験の限界を指摘し、「実験者がシステムの一部に組み込まれて観察対象の脳の一部として機能しつつ観察する」方法を提唱。技術的にはまだまだこれからのようであるが、特に現実社会における社会的脳機能を考察した最終章の「第6章 つながる脳」は、脳科学という枠にとどまらず、ヒトと社会を考える上で示唆に富むものと思う。2009/06/29
kgbu
3
「脳研究の最前線」(2006) 「つながる脳科学」(2016) の中間報告みたいな位置付けで2009年出版。VRの技術とのかかわりの展望、予想も含まれていて、その部分がとても豊かに感じる。さらに研究をこれから進める上での想定とその根拠についても結果が出てからの本ではなかなか読めないので楽しかった。 この時点ではニューロンに発光したり光に反応する遺伝子を発現させて制御、観測したりする技術が無かったので今読むとほんの少しもどかしいが、こんな速度で進歩してるなんて幸せなんだとも感じた。2017/04/18
ちゃんぐ
3
最初は私信のような書き出しで次に自分の研究の紹介。途中、西尾維新を読んでいるような錯覚に陥りましたが、サルの実験の件は興味深かったです。攻殻機動隊の初期の初期には、このような議論・実験がなされるのだろうなと思索しつつ読了。2016/01/31