出版社内容情報
聖書から、ドン・キホーテへ、カズオ・イシグロから、『映像研には手を出すな!』まで、古今東西のテキストを縦横無人に跳躍しながら、人文学の実践と本質に触れる
内容説明
文学部に対する風当たりは、以前にもまして強くなっている。当の文学部自体が自信喪失して、さまざまに姑息な小手先の「改革」によって、この逆風を乗り切ろうとしているかのようである。本書は、そんな世の流れに真っ向から反抗して、臆面もなく旧き良き人文学の意義を唱えようとするものである。文学部は、より深く反時代的に、その伝統と本分に立ち返ることによってのみ、その使命を果たすことができるからである。
目次
プロローグ 精神の自由は知識ではない
第1章 文脈―テクストと実存をつなぐもの
第2章 近代芸術の出発点―日常を異化する装置
第3章 物象化した世界―経験の「全体性」の喪失
第4章 精神分析学の言語観―文脈の科学
第5章 批評―伝統への挑戦と覚醒
第6章 作品批評という営み―観客という共同体の創出
エピローグ ディオゲネス
著者等紹介
田島正樹[タジママサキ]
哲学者、元千葉大学文学部教授。1950年大阪生まれ。東京大学教養学部フランス科卒。同大学院博士課程哲学専攻修了(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Mercy
1
著者年来のテーマであるフレーゲの文脈原理からラカンのシニフィアンの欲望論へと越境した軌跡が、美学・芸術学を通じた政治哲学に結実した待望の単著。アベラールによる聖書の講義が学生たちを文脈の自由へと誘惑した大学の起源から説きあかし、主体性は近代小説が夢見た全体性の理念となって豊作をもたらすも、やがて失効する。それでもなお、社会進化論に抗して敢然と超環境的存在者たる人間の言語的思考=批評を伝統をゆさぶり、再確認させる政治的実践として位置づけ、『映像研には手を出すな!』に着地させるスリリングな冒険だ。いざゆかん!2022/01/27
you
0
大変良かった。メモしたことを何度も繰り返し読みたい。図書館2023/12/25