出版社内容情報
資本主義に抵抗するだって? それこそ資本主義的「商売」だ!
反体制パンク・ロッカーはなぜ自殺したか?/左翼活動家のロフトはブルジョワに大人気?/反文明批評、反消費主義は新しい市場を生むだけ?/マルクスの誤謬、ヴェブレンの慧眼/環境問題をユートピア思想ではなく制度設計で解決――。 異色の哲学者ヒースとポッターのコンビが、反体制派の論理的な破綻を徹底的に暴く!
1 カウンターカルチャーの誕生
2 フロイト、カリフォルニアへ行く
3 ノーマルであること
4 自分が嫌いだ、だから買いたい
5 過激な反逆
6 制服と画一性
7 地位の追求からクールの探求へ
8 コカ・コーラ化
9 ありがとう、インド
10 宇宙船地球号
【著者紹介】
1967年、カナダ生まれ。哲学者、トロント大学教授。著書に『ルールに従う』『資本主義が嫌いな人のための経済学』(ともにNTT出版)などがある。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
梟をめぐる読書
24
<反大衆><反消費>を至上の価値とするアメリカ流のカウンターカルチャー思想が実際はいかに消費主義的であり消費文化的であったか、を徹底的に暴きたてた一冊。カウンターを謳って「反消費主義的」な消費の選択をすることが結局は消費文化を拡大させ消費主義を加速させてきたという指摘は尤もで、二十世紀のカウンターカルチャー運動が政治的には「何も変革しなかった」というのもわかるのだが。予防線だらけの文章が正直読んでいてもどかしい。だが本書で語られる文化事情は日本でもほぼ共通しており、決して「対岸の火事」ではない。2015/04/16
ハチアカデミー
18
「誰がカート・コバーンを殺したのか」から始まる、資本主義社会にカウンターカルチャーが与えた影響を解き明かす一冊。現代社会における最大の問題を「行きすぎた消費主義」にみいだし、国や社会、習慣に左右されない価値観に重きをおくカウンターカルチャーが、全体に回収されない他者との違いを求めるが故に、消費主義を加速させてしまったと論じる。もちろん資本主義万歳という話ではなく、社会にはある程度のルールが必要でその議論をしっかりしましょうという論。ゲバラのTシャツに感じる違和感は反逆という消費を的確に表している。2014/11/28
しゅん
17
ロック、アート、SF、現代思想、さらには今のネットカルチャーに至るまで根深い影響力を発揮した「カウンターカルチャー」という思想が、実際のところ根拠を持たない神話でしかないことを次々と暴いてみせる快作。社会というシステム自体が悪であるという凝り固まった考えが、建設的な議論をいかに踏みにじって、いかに消費文化を加速させたか。僕自身、学生時代から一種の「反逆」信仰を抱ぎつつ同時に違和感を覚えていたので、ここで言われてることには納得することばかりだった。読むと物事の捉え方の精度が鍛えられる一冊だと思う。2019/02/15
臓物ちゃん
14
どうして「大人たちに支配されるな」とか言っときながら欅坂は秋元康に支配されているのか?本書によればそれは秋元氏のバックボーンである70年代カウンターカルチャーに根本的欠陥が存在するからだ!彼らが社会問題に対して具体的な政策モデルの模索ではなく「個人の意識革命」やら「ルールそのものをブチ壊す」方向に情熱を向けた結果、改革にまるで貢献しないどころか西野亮廣のような他者との差異化につけこんだ大量消費文化まで生み出してしまった!俺の長年のモヤモヤを見事に言語化してくれた、まさに「くせぇ口塞げや限界です」な一冊。2021/03/18
くさてる
14
題名通りの本だけど、とても面白かった。60年代に始まり、現代も一定の支持を得る反体制という名の文化が、かれらが嫌悪するはずの消費資本主義文化をいかに後押ししているのかという現実を、具体例も多く解説しているので分かりやすいです。簡単な解決策などなく、民主的な政治活動の価値を訴える結論も、わたしとしては納得いくものでした。おすすめ。2015/06/03