内容説明
社会学(マス・コミュニケーション研究)、政治学(投票行動研究)において、今日よく知られた極めて多くの用語・概念を生んだ本書は、1940年米大統領戦でのパネル調査法による分析を通して、マスコミと個人とによる情報の流れと(影響力)、人々の意見・態度(世論)の形成過程とを解明した不朽の名著である。
目次
1940年オハイオ州エリー郡
共和党支持者と民主党支持者の社会的相違
共和党支持者と民主党支持者のイデオロギーの違い
選挙への参加
最終決定の時期
投票意図変更のタイプ
顕在化の効果
補強効果
改変効果
キャンペーンの全体的効果
勝者の予想
有権者が知らされたもの
ラジオと印刷物
社会集団の政治的同質性
パーソナルな影響の性質
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
roughfractus02
7
マス・コミュニケーション研究はプロパガンダ研究に始まる。本書は1940年の大統領選にオハイオ州エリー郡の住民の投票行動に対して、著者のグループが行った面接調査に基づく。分析は、新聞やラジオの情報が直接聴取者の行動を促すのではなく、「オピニオンリーダー」という世論形成を促す存在を通して、聴取者が投票の意思決定をしたという点を明らかにした。このコミュニケーションの2段階の流れから、さらに著者は、オピニオンリーダーの影響力がある層に限られる点も示し、日常は多層から成り、質的分析評価を要するという見解を提起する。2021/11/03
抹茶ケーキ
0
他人に大きな影響を与える「オピニオン・リーダー」の存在を同定し、「メディア⇒オピニオン・リーダー⇒フォロワー」という「コミュニケーションの二つの流れ」説を提示し、「メディアは人間の行動に大きな影響を与える」とする強力効果説に対して、メディアの重要性よりもパーソナルな影響力を重要視する「限定効果説」を提示。メディア実証研究最初期の本なので、さすがに実証は古びているけど、古典として読む価値はあると思った。2017/08/11
ふくろう
0
「オピニオン・リーダー」という言葉が使われた、おそらく最初の文献。コミュニケーション論でいうところの「限定効果理論」と呼ばれる一分野。さて、人は他者の意見に左右されるのか、それともメディアに左右されるのか??アメリカのコミュニケーション論は、どこまでも「効果」を意識する。2009/04/24